出版社;有斐閣 発行年(西暦);2005 著者名;芝池義一著
行政活動の基本原理・行政組織・行政作用・行政手続と情報管理・行政訴訟・国家補償の全部で6つの章に分けて編成され、特に行政訴訟の部分の説明が厚い。情報管理が行政手続に含まれているのが目につくがこれは情報公開法によるもの。行政事件訴訟法の改正を取り込むと同時に、判例についても平成に入ってからの最新判例が収録されており、余計な負担がない。抽象的な議論ではなく判例にねざした解説がこころみられており、ある程度学習したうえで読むと「何が問題なのか」が明瞭に把握できる仕掛けとなっている。事細かな規定だけではなく、具体的な判例と行政の事情などもふまえてある入門書としては名著の部類だろうと思う。文字も読みやすい。
行政手続法は事前的な権利利益の保護、行政不服審査法は事後的な権利利益の保護という位置づけの理解でよいのだろう。ただし文言は非常に似通っていてもやはり法的趣旨が異なるため、微妙な差異はある。
たとえば行政不服審査法自体は「行政救済」といった位置づけになるが、行政手続法については「救済」という範疇には入らない(事前的な手続きだからであろう)。
行政手続法の作用は「処分、行政指導および届出」に及ぶ。行政不服審査法の作用は「処分そのほかの公の権利の行使」に及ぶ。行政手続法は良くも悪くも3つしか規定されていないが、行政不服審査法は「公の権利の行使」という表現で適用範囲がかなり広い。さらに行政不服審査法については人の収容など継続的性質を有する「事実」にも及ぶものとされる。
行政手続法の「処分」は法律の中でさらに、
① 申請に対する処分
② 不利益処分
に区分される。
「行政庁が、法令に基づき、特定の者を名宛人として直接にこれに義務を課し、またはその権利を制限する処分を(不利益処分)という。ただし次のいずれかに該当するものを除く。
ア、 事実上の行為および事実上の行為をするにあたりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分
イ、 申請により求められた許認可等を拒否する処分そのほか申請に基づき当該申請をした者を名宛人としてされる処分」
こうした条文検討をしてみると、やはり行政手続法には事実上の行為は想定されず、しかも不利益処分についても事実上の行為は厳密に除外されていることがわかる。
この行政手続法にも行政不服審査法にもいずれも「補正」という手続きが定められているが、事前・事後の違いはやはり補正にも大きく現れる。
行政手続法7条は以下のように定める。
「行政庁は申請書の記載事項に不備がないこと、申請書に必要な書類が添付されていること、申請をすることができる期間内にされたものであることそのほか法令に定められた申請の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をしたものに対して相当の期間を定めて当該申請の補正を求めなければならない」そして補正が追いつかない場合には「当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」(7条)。
この場合の「拒否」は実はもう一度書類をそろえれば申請書を提出できるので「拒否」と表現されている。ただし行政不服審査法では、採決で申請が「却下」されることになる。却下採決は補正が「不可能」ということを意味するので、同じ不服申し立ては行政不服審査法上できなくなるという点が厳しい。また弁護士などの代理人についても行政手続法では任意で選任されて一切の行為ができるが行政不服審査法では「取り下げ」については特別の委任が必要とされている。また共同不服申し立ての場合には取り下げだけは総代はできないという定めになっている。また参加人についても行政手続法も行政不服審査法も「利害関係」が重視され「主催者または審査庁」が必要があると認めるとき参加を求めまたは許可するという形式をとる(行政手続法17条、行政不服審査法24条)。ただし行政不服審査法の参加人は処分庁から提出された書類そのほかの物件の閲覧を求めることができる」(行政不服審査法33条)とされているのに対して、行政手続法では聴聞の参加人を2つに区分して「当該不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人」についてのみ資料の閲覧を求めることができるとしている。行政機密の事前的な漏洩をおそらく行政手続法は懸念したものではないかと推定される。
(参加人制度)
行政手続法の参加人とは、まだ「事前」であるので不利益処分がなされた場合に利害関係を有することになるであろうと思われる人間が対象となるが、行政不服審査法ではもちろん事後的な解決策となるので「利害関係人」と端的に表現されている。いずれも主催者もしくは審査庁が必要性を認める場合に許可が出る。ただし行政手続法はやはり事前的な手続きなので「不利益処分がなされたときに利益を害される可能性」がある参加人にのみ資料の閲覧が認められるのに対して、事後的な行政不服審査法では不服申し立ての参加人は条件なしに閲覧権が認められている。これはもう事前である以上機密の問題もあることを配慮された規定と考えるべきだろう。
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