2007年12月25日火曜日

意外な世界史  

著者名;井野瀬久美恵  発行年(西暦);1996 出版社;PHP研究所
 この本はもともと高校生用に連載されていたものを社会人向けに編集しなおしたものらしい。内容的には基礎的なものばかりだが、興味がわくように映画の紹介などもされている。たとえばチャップリンの「独裁者」という映画が発表された前後に独ソ不可侵条約が締結され、その結果チャップリンは「共産主義者」ではないかという疑いをかけられることになるとか「ラストエンペラー」をもとに「中国における黄色」という高貴な色の説明とかがなされる。
 インドのタージ・マナル建設の裏事情や遊牧民族の文化などとにかくテーマは受験生に興味をもたせるように配置されているのだが、もちろん社会人が読んでも面白い。産業革命が毛織物業ではなく木綿業から始まった理由を「需要」の観点から科学的に説明したり、カンボジアの歴史を日本の侵略時代からフランス占領、そしてシアヌーク殿下がもともとフランスよりの政策をしていたことから隣国ベトナムからフランス占領に手を貸す人間がいたことからポル・ポトのベトナム嫌いが始まったことなど。ポル・ポト自身がもともとフランスに留学していたインテリだったというのはよく知られているが共産主義に目覚めたのは、フランス留学であったと筆者はしている。だとするとヨーロッパの中でもフランス共産党というのはかなり力をもっていたが、まさかあの大虐殺をおこなうところまでは共産党自体も予測はしていなかっただろう。文化を考えるときには歴史も考慮に入れる必要性がある。世界史というのはとにかく面白いし、それと地図をあわせ読んでいると自分の世界がちょっとだけ広くなったような気にもなる。

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