2007年12月24日月曜日

天皇制の基層

著者名;吉本隆明・赤坂憲雄 発行年(西暦);1990 出版社;作品社
柳田國男、折口信夫といった「文化人類学」「民俗学」とったジャンルで狭く解釈されている学者の検証と天皇制についての考察。単なる賛成・反対といった狭い意味ではなく、感覚的また精神的な土壌から根底として制度を検証する姿勢は思想家としてあるべき姿だと思う。現人神信仰についてもなぜにそれが日本人の信性に適合するのかといった視点で考えなければ戦前のような過ちはまた起こる。いわゆる戦後民主主義の短絡的な天皇制についての議論、そしてまた明治維新以後にかなり改変されたと思しき大嘗祭についてもそれが本当に「伝統」に該当するのかいなかといったことについてもよく承知をしておかなければならない。縄文時代という「始まり」からよくこの島国に住む人間のありかたを総合的に考えていかないと人間というのはともすれば単純な議論に逃げ込む癖がある。単純でわかりやすいというのは「資格試験」や「受験」ではかなり有効なスキルだが、文化論ではむしろ現実がかなり錯綜しているものであるため、とてつもなく難しくしんどい作業になる。それを忘れた瞬間におそらく学問の進歩は止まるのだろう。

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