2007年12月24日月曜日

アダム・スミスの誤算

著者名;佐伯 啓思 発行年(西暦);1999 出版社;PHP研究所
いわゆる「新書ブーム」もある程度一段落したようだ。一時期は粗製乱造ともいえるほど各出版社が新書シリーズを出版していたが、現在ではそうしたシリーズも一定の冊数におさまってきているように思う。岩波新書と講談社現代新書はもちろん老舗であり、新書もかなりのレベルに達している本が多いが、それでも「ええー」といいたくなるような本もいくつかある。そうした中で平凡社新書とこのPHP研究所の新書はかなりいい本を出している新興新書シリーズといえそうだ。この本ではアダムスミスの「諸国民の富」や「道徳哲学」をもとにアダム・スミスが生きた戦乱の時代(スペイン継承戦争・対仏戦争・英仏戦争)そして国内のスコットランド併合やジャコバイトの反乱といったテーマを追求するとともに重商主義への反論という形で「諸国民の富」が執筆されたというようなことや現代のグローバリズムの検証とともに著述されている。
 必ずしもわかりやすい内容とは思えないが、アダム・スミス自体が相当に難解かつ深遠な議論をもとに執筆しているだけに高校の教科書レベルの現在の常識をひっくりかえすにはやむをえない構成だろう。600円とプラスアルファでこうした本が読める日本というのは本当にいい国だとしみじみ思う。また担当編集者のご苦労もしのばれる。

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