2007年12月24日月曜日

日本人は思想したか

著者名;吉本隆明・梅原猛・中沢新一  発行年(西暦);1995 出版社;新潮社
個人的には三人とも偉大な思想家ではあるが都市国家に生きる思想家との見解を持っている。三人とも銘柄大学出身のいわば思想界のエリートであるため、市井の「感覚的なもの」を語るときにはある種の情報のフィルタリングがかけてられているのではとの思いがぬぐいされない。とはいえ、西洋哲学から東洋哲学まで縦横無尽に語りつくされる鼎談の内容と豊富な注はきわめて魅力的な構成だ。マルクスが近代思想の一つにすぎなかった‥などといまさら語られてもちょっと遅い感もあるが、自然にまみれていないころの人類などを把握しきれない思想の限界は今でも限界であり続けている。日本の神道の二重性(伊勢神道と民間神道)など種々のテーマは常に日本の思想をテーマにしているが、その基調に縄文時代が設定されているのは興味深い。伊勢神道が発達したのは南北朝時代といわれているが、縄文時代と南北朝、そして梅原氏がいわゆる京都学派であることから、鼎談の内容が非常に興味深くなってくる。たいていの「神話」は儀式と結びついているが、それと「歌」との関連性も面白い。レヴィ・ストロースが「古事記」を読んで感嘆したというが、神話の共時的構造を明らかにした文化人類学者をも感嘆させた古事記をめぐる箇所も面白い。ただし相当な「文科系」でないと、途中で投げ出したくなる箇所もあるかもしれない。中沢が一連の中で切れ味のよい司会ぶりを発揮。

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