2007年12月27日木曜日

アウトローを生きる

著者名;青木雄二 梁石日   発行年(西暦);2001 出版社;経済界
 かたや「血と骨」が映画化される山本周五郎賞受賞作家、かたや先日逝去された漫画家の異色対談だ。一貫して「金」と「人生」、そして日本文化と朝鮮文化について語られている。アウトローとしての行き方に加えてさりげなく「基礎を築くためにはエネルギーを蓄える時期も必要」「金の使い方に人間性がでてくる」といった経験則がちりばめられている。
 巻末には朝鮮文化について語られているが、初期の大和朝廷や皇族が半島大陸系等から「大きな影響」を受けていたことや、「日暮里」(ハングルで村の中心という意味)や「駒」「高麗」が高麗から由来していたことなどが語られている。第二次世界大戦後、ポツダム宣言のさいにはスターリンは半島の北部と北海道を要求していたらしいが当時はすでに共産主義と資本主義との冷戦の始まりであったこと、李承晩による独裁政治や全斗換大統領時代の光州事件についても語られている。正直いってビジネス書物でここまで近現代について踏み込んだ書籍というのは珍しい。皇国史観というものが日本にはあり、それと学術的な研究とは微妙な関係を保ちつつある現状では、一般社会ではなかなかうけいれられにくい内容ともなりうる。ただし、「金」とからんだ場合にはイデオロギーとは異なり、「生きる」という目的に直接からむこととなる。2・26事件ですら最終的には「最低生活」が決起の原因であったことから、これから経済情勢とリンクしてこの朝鮮と日本文化の関係についてはよりいっそう研究が進んでいくのだろう。もっとも日常的な実感としても20年前と比較すれば両国の関係はそれでもまだなお改善しつつあると思う。アジアとしての一体感は、イデオロギーではなく、やはり「生活」の中から生まれてくるものなのかもしれない。

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