2007年12月24日月曜日

できる社員は「やり過ごす」

著者名;高橋伸夫 発行年(西暦);1996 出版社;ネスコ・文藝春秋
 タイトルだけからすると「インチキ・ビジネス本」のようだが著者はれっきとした東京大学大学院教授で論説もすべてきっちり統計学によるデータの裏づけによる。「やりすごし」という現象から「見通し」の有無が実際にはビジネスパーソンの意思決定を左右するものと解く。著者の言葉によれば「未来傾斜原理」である。直属上司との人間関係がいきづまっていても通常の企業では「人事異動がおこなわれるという見通し」があらうので、すぐに企業から「離脱」する人間はいないという論法だ。過去の実績や現在の力関係よりも未来の実現の期待によりかかって意思決定をするというのが未来傾斜原理の骨子だが、これは感覚的にも納得できる結論だ。途中アクセルロッドの理論研究を引用し、長いつきあいを重視する上品な「プログラム」こそが一番長生きすることも著述されている。この論法で企業文化や経営理念の重要性も再認識される。たとえ実現不可能でも「夢」や「経営理念」がとかれる企業には不思議と人材は集まるものだ。

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