2007年12月26日水曜日

日本家計簿記史 

著者名;三代川正秀 発行年(西暦);1998 出版社;税務経理協会
アナール学派とよばれる歴史学派の手法にもとづき、個々の家庭などの証憑を資料として取り上げて、家計簿記についての考察を加える。総論ではゾンバルトによる複式簿記の過大評価をやや批判的に取り上げ、社会史アプローチ、家事記録と事業簿などについて総論を述べている。さらに家計簿記については、記録される「紙」の歴史も重要であり、パピルスや和紙などの記録帳簿としての役割まで考察してくれている。現在ではCDやメモリということになるのだろうが「何に」記録をするのかという視点は個人的にはもちあわせていなかったため非常に興味深く第2章を読んだ。第3章以降は当時の「家庭科」における家計簿教育を考察していき、単式簿記や雑誌の付録などがはたしてきた社会的役割について著述がなされている。農業簿記、わけても京大簿記とよばれる略式簿記が日本農業にはたしてきた役割についても言及されている。最近の動向についてはキャッシュレスという方向性が述べられているが、実際にはウェブ上で家計簿管理をしている例が実際には多いのだろう。デジタルの歴史はほぼ永久だから、100年後の現在の家計簿あ家庭経済についての研究は飛躍的に進歩しているであろうことを予感させる。価格はやや3700円を超える高価な本だが簿記や家計簿といったものについて興味がある人間にはきわめて魅力的な書籍である。

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