2007年12月26日水曜日

国際会計論  

著者名;権 秦殷  発行年(西暦);2001  出版社;創成社
国際会計基準とはいってもそれをコンパクトにまとめた書籍というのは非常に少ない。この本では全体を①総論②欧米の会計制度③アジアの会計制度④国際会計基準⑤国際財務報告⑥国際会計監査⑦国際管理会計⑧外貨換算会計に分けて歴史的・文化的背景から説明がなされている。この本では国際会計とは「国際的に営まれる個人または組織体の経済活動について、会計情報を伝達する際の諸問題を取り扱う会計領域」として、欧米ののみならず韓国やシンガポールなどの会計制度についても説明がなされ、IASがいかにそれらの国々で取り込まれているのかがわかるようになっている。日本においても室町時代に始まる商業帳簿の歴史についてふれられており、非常に興味深い。また中国においても1980年代から公認会計士制度が導入されており、香港などでは事実上国際会計基準が作成基準となっているようだ。127ページでは国際会計基準のフレームワークが図式化されている。またコアスタンダードのリストも表示されており非常に読みやすい。財務諸表の基礎となる概念は発生主義と継続企業の公準であり、財務諸表の情報の有用性を決定する質的特長として①理解可能性②目的適合性③信頼性④比較可能性⑤適時性⑤便益・コストのバランス⑥質的特性のトレードオフ⑦適正表示があげられている。また資産の定義として「過去の事象の結果として当該企業が支配し、かつ将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源」、負債の定義として「過去の事象から発生した当該企業の現在の債務であり、これを決済することにより経済的便益を包含する資源が当該企業から流出する結果になると予想されるもの」、持分として「特定企業のすべての負債を控除した残余の資産に対する請求権」としている。こうした概念をしっかり認識させ、わかりやすくその後の構成要素の2要件まで示してくれると理解が更に促進されるというものだ。これで3000円はかなりお得な買い物といえるだろう。

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