2007年12月26日水曜日

言論の自由対○○○

著者名;立花隆  発行年(西暦);2004 出版社;文藝春秋
 東京地裁において今年ある雑誌がプライバシー侵害にあたるとして出版差し止めの仮処分がなされた。その後高裁にて仮処分は取り消されたが、当時憲法の自由と私人のプライバシー保護が利益衡量できるのかどうかなどが争点となった。基本的には立花氏が本書で指摘しているように「衡平法」の世界で争点となるのは財産法が主であって憲法とプライバシーとではそもそも仮処分の対象ともなりえない。マックレイキング(社会の腐敗部分をかきまわして空気をいれる作業)は必要と主張するこの本書は地裁の仮処分命令を全文収録し、裁判所の民事訴訟における役割を再確認している。民事訴訟法第二条においては「裁判所は民事訴訟が公平かつ迅速におこなわれるようにつとめなければならない」と規定しているがこの事件では「迅速」のほうが重視されたようだ。現実的悪意」「北方ジャーナル訴訟」など憲法や英米法、大陸法などの基礎的概念は説明してくれているので、今後もこの本書の役割は(緊急出版という形態であったにせよ)2004年と同様に失われることはないだろう。 

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