2007年12月27日木曜日

本と新聞

著者名;原寿雄・内橋克人 発行年(西暦);1995 出版社;岩波書店
 いわゆる再販制度をめぐる問題提起だ。1990年代中ごろは新聞や雑誌については規制緩和の流れの中、再販制度も廃止されようとしていた。当時、東洋経済新聞社以外には特段に「賛成」もしくは「討議」しようという流れはどこのメディアにもなかったと記憶する。どちらかといえば規制緩和をどんどん推し進める方向でづべてのメディアが統一されていたともいえる。この談話集の中でも内橋氏をのぞいては「文化」「文化の低俗」といった言葉が飛び交うが、こうした本や雑誌だけは特別扱いという論調は「驕り」の現れではないかと今でも個人的には考えている。規制緩和をすれば大企業などが優位にたち、規模の小さい業者は撤退せざるをえなくなるわけだが、出版だけはその痛みを味わいたくないというエゴではないだろうか。その中で内橋克人氏が「再販維持」に関する論拠をきわめて冷静に提示してくれている。契約スチュワーデスなどの議論についてマスコミはあまり抑圧される側の取材はしなかったが、マスコミには本来少数派の議論を紹介するという社会的役割がありそれが民主主義を支えている。マイノリティを保護するという役割は再販制度があって初めて可能になることだ。また経営基盤がしっかりしていることで、「情報公開の基礎」が担保される。また新聞・出版は非価格競争であり、本来のジャーナリズムの活動は値段で左右されるものではない。こうした納得させる議論がなければ一般社会に出版業界は訴求力をもたない、と。
 内橋氏が一流の経済学者として評価されている理由がわかる論調だ。しかしこの発言については各一流メディアの代表はあまり正面からはこの本では解答できていないようにもみえる。営利ということもやはりある程度考慮せざるをえず、このころからマスコミは少数派の意見を反映しなくなっていたからかもしれない。

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