2007年8月20日月曜日

SNS的仕事術

 著者;鶴野充茂 ソフトバンク新書 2006年
 仕事とプライベートのミクスチャーとか個人名によるブログやウェブの発信など「個人」を意識したウェブ展開の仕事術を提唱。リアルのコミュニティを作ると同時にいわゆるハンドルネームの悪用などについて警鐘をならすのだが…。ウェブを実名もしくはそれに近いペンネームなどによって展開している人は多いがこのまだウェブの黎明期にはそれなりのリスクを負う可能性もあるのではないか、という疑問もあり。
 いかに仕事では力のある人と組んで結果を出すか、という視点にたてば、確かにウェブは人と人の集合体にはなるのだが、通常、管理人あてに公開メールアドレスをトップページに掲載するのは一種のマナーになっている。本当にそのウェブに協調性を見出すのでればデジタルの世界ではハンドルネームで、公開用メールで一般には知られぬ形でアナログの世界では具体名で…というネットワークになるのが現状では一般的だと思う。おそらくオフ会では名刺の交換なども普通はしているだろうし…。

2007年8月19日日曜日

インターネットの法と慣習

著者名;自由秀彰 ソフトバンク新書;2006年
 法が正当性を持つ背景などかなり高度な法学入門だと思う。一種の国際比較法的な視点も著述されており、大陸法、英米法として国内法の「制度」の違いの説明とウェブ上での法規制がどうあるべきかということまで紹介。ローマ市民法や教会法などから話が始まるため最初はとっつきにくい面があるかもしれないが、現在、明確な言論規制とか統一基準がない掲示板などに今後予想される「法規制」をあみとくヒントがこのローマ法や開拓時代のアメリカにあるとする著者の想像力はけっして的外れではない。またポリシー・ロンダリングという言葉を用いて国際機関と国内法との関係まで考察されており、条約と憲法が同じ程度の重要性をもつという一般書籍で著述されている「こと」についての問題点もあぶりだし。法学、法社会学、法歴史学の格好の入門書だと思う。

世界一やさしいネットワークの本

著者名 ;山村久美子 発行年(西暦);2004年 翔泳社
 絵本のように買い込まれたネットワーク入門の本。小学校で「糸電話で3人以上が会話するためにはどうするべきか」というテーマに取り組む子供たち。ルータ、IPアドレス、MACアドレス、トランスポート層の役割など難しい用語をわかりやすく解説。小学校時代のちょっとしたロマンスなどもからめてあって非常に面白い。そもそもネットワークってなんだろう…と考え始めたときに、基本の糸電話から話を始めていって、しかも絵本風の本にしてしまうというアイデアがいい。
 最後に付け足しの二進数やWWWの解説ははたして必要だったのかどうか…。ただこうした絵本がこれから小学生や中学生向けにもいろいろ出版される可能性は高いと思う。だって楽しいし…

まんが式IT塾パケットのしくみ

著者;きみたりゅうじ 出版社;技術評論社 出版年;2006年
 バイト情報をパケットにぐるぐる詰め込み、目的地をIPアドレスとして付属。また長い旅になるため「エラー訂正フラグ」などもつけてあげて、出発。そしてルータという門番を潜り抜けてパケットはばらばらに目的地をめざして動く…。で、途中でパケットがおっこちたりしないようにするのがTCP.パケットについているシークエンス番号をもとにして、TCPの協力によりまた受信側でパケットを組み合わせる…。
 もうそれはプロの人にはあたりまえ~といわれそうな内容をしっかり具体例で説明してくれているところが有難い。通信は内容がわからないまま使っているが理想的にはやはり自分がどんなソフトをどういうように使っているのか真髄をまずきわめておくことが重要だから…。語り口は面白いし、ネットワークの知識にもなるので値段はやや高いがそれでもお勧めのネットワークの本。

毎週CPUを買う男

 PCファン;毎日コミュニケーションズ;2007年
 究極のスケルトンケースに挑戦、毎月3万円づつを貯金して欲しいものをそこから購入するという当初の目的はくずれ、毎週CPUのみを買いあさる貧乏物語と化してしまっているかなり珍しいレポート。著者はやはり仕事抜きでCPUのベンチマーク測定に生きがいを見出しているらしい。最後には貯金どころか借金まで背負って、CPUや周波数の測定にのぞむ。クロックアップを狙うのがCPU購入の正しい下心など独特のセオリーが滲み出す。サーバー用のチップセットでは結構有名なメモリインタリーブといった手法の解説も自作パソコンの作成途中で言及してくれるので楽しみながら勉強もできるすぐれもの。なぜかVIAにたいする入れ込みが非常に激しいのだが…。笑って、しかし考えるCPUのなぜ?を身体をはった取材で追求してくれる編集部のTK氏に感動。

人生練習帳

 斉藤孝著・草思社・2007年
 「通過儀礼」とか「偶然と必然」というのは高校時代に考えていた以上に社会では大きな力と意味を持っていた…ように思う。やはり礼儀というのはそれなりの時間と必然性をへて今に至るわけで、先祖代々続いている儀式なり伝統なりといったものがもつ「力」に対して鈍感でありつづけるわけにはいかない。お盆などで里帰りをする自動車の列がその事実を画像にしてくれている。別に里帰りをするのに日本全国で同じ時期に集中しなくてもよさそうなものだ…と昔は思っていたが、最近はやはりそれもある種の大人への「通過儀礼」なんだ、と思えるようになった。ああいうラッシュを乗り越えていくのが日本で生きるということなんだな、と。
 自分自身の生活の細かな一面を鋭く見直す機会を与えてくれる一冊。内容的には「?」という部分もあることにはあるが、生活の細やかなところで、新たな発見をさせてくれるきっかけにはなる本だと思う。

平成ホイホイ受験術

 多胡輝著;幻冬舎;2003年
昔新書サイズで名作といわれた勉強方法の本が平成にA5判サイズでよみがえる。しかも意外なことに幻冬舎という出版社からの復刊だ。「りっぱな勉強部屋や書斎より廊下や居間の片隅を生かせ」という一種の励ましや、「はじめはいやだけどとりあえず何日かやってみる」など自分自身の経験則からしても「なるほど」と思えるスキルが多い。他人の知識や技術を盗み取るのが進歩の秘訣など仕事にも活用できるワザが紹介されている。「群化」によって記憶量を増やすなど、進歩の秘訣がたくさん。こういうワザなどもいろいろ日常生活に活用して取り入れていくと、一時間の効率がさらに増すような気がする。

大人のための超「勉強法」

 和田秀樹著・アスコム・2007年
 記憶の保持率について「復習」がいかに大事かということに力点が置かれていると思う。大人になると同じ本を読み返すことはあまりないのだが、和田秀樹さんの本は新作が出るたびに前のバージョンの本の内容がバージョンアップされて著述されているので、必然的に復習しているのと同じ効果となる。試験に必要な情報だけをいかに効率的に取り込むか、いかに記憶の保持率を高めるか、というポイントは学習時間の半分を復習にあてる、ということに尽きるようだ。さらに自分自身への「認知」を間違わないように自問自答するという姿勢の大事さも改めてこの本で力説されている。推論(仮説力)の偏りをいかになくすか、というのは難しい…。ウェブをやっていることそのものは自分自身を客観的にみつめるきっかけにはなるのだが「偏り」をどうやって是正していくのか、基準は何か…と考え出すと結構奥が深いのかも。

試験にでるPC単語スペシャル

 PCファン;毎日コミュニケーション;2007年
あんまり試験には出そうもないが、パソコン雑誌を読むときに「GeForceってなんだっけ」と疑問に感じたら、グーグルで調べるよりもお手軽な感じの辞書という冊子。グラフィックチップのブランド名なのだが、ブラフィックボードであればそれに関係する用語を一覧にしてくれているのが便利。ウェブ検索よりも分野別に雑誌でよく取り上げられる用語が簡略に説明されているから関係している用語も一覧できる。この「一覧性」というのがパソコン検索にはまだ欠けている部分だと思う。記録型ドライブの進化の歴史などオリジナルの年表もなかなかの出来具合。PCファンの付録冊子にしておくのはちょっともったいないかもしれない。

人付き合いが楽になるちょっとした習慣

著者;和田秀樹 祥伝社 2005年
自 分の感情を知るためには他人が必要…というあたりまえのことをサラリと指摘。さらに日本文化の中で「場」が読めない人間がいかに苦労するかということも 「甘えの理論」とともに解説。「自己愛性人格障害」についても解説されているのだが、これってたまに見かける。特徴としては、「自己の重要性に関する誇大 な感覚」「限りない成功、権力などにとらわれている」「自分だけが特別」「過剰な賞賛をもとめる」「特権意識」「対人関係で相手を不当に利用する」「共感 の欠如」「他人に嫉妬」「尊大で傲慢な態度」…あああ、思い当たるフシのある人いるなあ…。結論としては大概の人に敬遠されて、仮に高い地位についても周 囲には「イエスマン」しか残らないと著者は著述。ただ、実際に本当に自己愛性の人が「孤立」するまでには周囲の人間にとっては本当に迷惑なことしきりなの だが…。最低限のルールを自分で決めて自分にそれを律するというのが一番効果的ということになるようだ。確かに最低限のルールを自分で決めて、あとは場の 状況によって「共感能力」の有無が発揮されるのだろう。

夢をかなえる時間術

著者;伊藤真 出版社;サンマーク出版 発行年2007年
 「夢」「目標」をしっかり確立してから、時間管理のスキルを考える…。あたりまえのようなだが、その「あたりまえ」がなかなか出来ないから人間は難しい。手段が目的化してしまうリスクを著者は指摘している。たとえば司法試験をめざすとした場合、最終的な目標は「合格」なのかあるいはそれから先にある「世界平和」とか「法律の下の平等」なのか、といった問題意識、課題意識の設定は確かに重要だ。
 私の場合には最終的な目標はおそらく今の仕事についてまず「極めてみること」、そのためにはやはり一般知識をある程度確立してから、特定分野への深い知識を獲得して夢のある商品、製品を作り出す…ということになる。それほど楽な夢ではないが、もしそれが名作あるいは素晴らしい商品であれば、世の中を良くする「最初の手がかり」にはなると思う。最終的な目標さえあれば途中の挫折などはあまり気にしないでいい、ということになるだろうか。

ビジネスマン出世の原理・原則

著者名;山田智彦 出版社;河出書房新社 発行年2006年
「肩書き」って難しいなあ…と思うのは、いずれどこかの組織体を離れればすべてはがれるラベルではあるのだが、そのラベルで他人はある程度の「推測」をする。大企業であれば大企業であるほど信用度がとりあえず増す…というのはどこの世界でも同じ。住宅ローンなどは民間企業よりもリストラなどの可能性が極めて低い市役所などのほうがおそらく金融機関は「信用」するはずだ。自治体の破産というのはやはりY市のようなケースを除いてはきわめて稀なことだし…。
 さて元銀行員の山田智彦氏の一種のビジネスに関するエッセイなのだが、戦国時代の武将の話がやや多いのが気になる。ただ、「諦めることなく志を継続し」というフレーズやメッセージが非常に多く見受けられるのは、やはりそれだけ大多数の人間が途中で諦めや失望感に襲われるからかもしれない。継続することだけでも一つの成功とか努力の証…と考えている自分にとっては、「継続」って大事なことだ…と当たり前のように考えている部分があるのだが、これってあんまり世の中の常識ではないらしい。「見切り」というのも確かに大事なのだけれど、「原理」とか「原則」って結局、どれだけ不確実性の高い現実世界で、期待値を維持できるか、維持すべきかという判断力にかかるのかもしれない。 

お金とツキを呼ぶちょっとした習慣術

著者;和田秀樹 出版社;祥伝社 発行年2007年
 「ものの見方」=「認知」は人間に予想を超えた影響を与える…というタイトルから始まるこの本はやはり認知科学の簡単な実生活への応用を説く。周囲の空気や感情などによっても認知がゆがむのが人間なのでマメに自分の「認知の偏り」を是正していこうという習慣を身に着ける術を紹介。自分が何をしても変わらない部分よりも自己投資など「可変的な部分」での努力を身につける…というのにはなるほどと思った。自分の力や努力が作用しない部分に重点を置いても状況は変わらないわけで…

弱者が強者になるために

 著者;野村克也 発行年1998年 出版社;ニッポン放送
今から10年前の1997年。Bクラスにずっと甘んじていたヤクルトスワローズが当時の日本一の覇者西武ライオンズを日本シリーズで破る。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名文句を残す野村克也監督の1997年を振り返っての一種の野村ノート1997年度版。卓越した戦力を持っていたわけではない。しかし他のセリーグ球団を突き放しての優勝の理由と根拠をこの書籍で知ることができる。一種ビジネスにも通じる点がかなりあるので、それが自分にとっての名著になってしまったのかもしれない。勝負の鉄則にあげられている「徹底的に相手の弱点をつけ」というのは、たとえば資金的もしくは労働力が圧倒的に優位にたつライバル会社に対して「いかに勝つか」を考えるときの基本ともなる。またチームプレーをいかに重視するかで戦力が2倍にも3倍にもなるというのもこの書籍を読むとよくわかる。「個性よりも実践力を伸ばせ」という教訓がそれだ。勝手なワンマンプレーでは組織全体が死滅してしまう。まず組織全体のことを考えてそれから自分個人の記録を考えるというダブルスタンダードは、非常に納得がいく。「功は拙に若かず」(呉子)、「功の成るは、成るの日に非ず、蓋し必ず由って起こる所あり」(呉子)という中国の古典などからの引用も、10年前からの人生経験で「なるほど」とうなづくことが多い。スタンドプレーより地道なプレーの積み重ねのほうが蓄積として相対的に大きくなっていくという実例は結構みてきたような気がする。
 ちょっとつまづいたときにはこの本を開く。そんなときには「①方法論②努力の方向性③考え方のどれかが間違っている」といったような目先のスランプを打開していく方法論やアドバイスの宝庫を目にすることができる。

「現役年齢」をのばす技術

著者;和田秀樹 PHP新書 2006年
「趣味を楽しむ」「旅行をする」といったほかに、知的能力が高いほうが死亡率が低いという統計データが紹介され、知的実践力のすすめなども。交際のためにお金を使うなど、前頭葉を活性化するための具体的な方法が目白押しに紹介。「働くことは健康のためによい可能性がある」という主張も展開(これは確かに実際に働いている人のほうが若く見えるというのは事実)。中高年になってからの商品開発能力の展開なども進められており、若いときからの経験が勉強がものをいうのが中高年(逆に言うと20代、30代における蓄積がいかに重要なことかということも裏返しでいる)。いずれにせよ老化現象はあるわけで、ゆっくりと働き方を老化にあわせて変えていく努力も必要になるだろう。

スッキリ!

著者;上大岡トメ 出版年2005年 出版社幻冬舎
 幻冬舎ってやっぱりすごい出版社だなあ、と思わせてくれる本。176ページのA5判で価格設定が1200円。教訓が60並んで、「人の名前を覚えようとする」「できない約束はしない」といった文字がかなりの大きなポイントで印刷。これがベストセラーになってしまうのだから、読者のニーズのつつき方がうまいのだろう。文芸書や写真集からさっさと見切りをつけて、実用書部門で意外性のある企画を印刷してしまうのも時代の流れをみすえてのことだろう。なんせ、文芸書となると山のような新刊と返品の嵐。実用書籍はなかなか返品の見切りも書店はつけにくい上に、ニーズは安定している。となるとマーケット市場としてはでかいわけだが、既存の実用書籍とはやはり一線を画する必要性がでてくる。そこでこうしたイラスト入り、教訓をメッセージにした実用集という発想になったのではないかと思う。可愛い4コマ漫画も入っていて、編集上の工夫もうまい。そして自分をポジティブにさせてくれるメッセージを(おそらく相当慎重に選択・配列して)掲載するという手法。何気ない本にみえて相当な感性と会議やうちあわせをへてできた本とみた。

年収10倍勉強法

 書籍名;年収10倍勉強法 著者;勝間和代 出版年2007年 出版社;ディスカバー社
「自分が幸せになるために勉強する」といった明確な目標設定をさらに下位の目標に細分化して、それぞれの副次的目標を設定してどんどんその課題をこなしていく。ここまではいろいろな勉強方法とさして異ならないが、レッツノートを無線LANをつないで自分の「補助脳」として利用しようという具体的なモバイルパソコンの利用方法や、セミナーの活用、マインドマネージャープロといったトニー・プザンのマインド・マップの取り込みなど具体的な道具について著述がさかれているのが魅力的。ミクシイやテクノラティといった検索エンジンの紹介と、給料の5パーセントから10パーセントを自己投資にあてるという目安も分かりやすい。勉強法で差別化できるのは道具とやり方という指摘も興味深い。いい道具といいコーチをいかにしてそろえていくかといった点を重視することには賛成。なかなか優れたコーチというのは苦労して探さないとみつからないものだが、道具をそろえていろいろ工夫してみること自体にはかなりのメリットがあるように思える。

図解大人のスキマ時間勉強法

書籍名;図解大人のスキマ時間勉強法 著者名;和田秀樹 発行年;2007 出版社;PHP研究所
新書サイズでまず新刊がでて、それから文庫本。そして今回のA4判と3回目のリニューアルに相当する。見開き構成で左に図解、右側に文章という構成で新たなおめみえ。一日の時間を見直すなどこれまで理解していたようなことでも判と編集方針が異なると違ってみえるのがポイントか。「時間の読めない娯楽はやめる」というのが著者の理念だがそうなるとHPもあんまし時間をかけないでせいぜい一日1時間程度におさめておくべきだろうか。

ヒット商品を最初に買う人たち

著者名;森行生;発行年(西暦)2007;ソフトバンク新書;値段;600-800円
  マーケティングの「イノベータ理論」を応用してIPODなどの人気商品の秘密を探る。イノベータをひきつけるだけでは商品としてはヒットせず、いかにして その後のアーリーアダプタ、フォロワーと呼ばれる層を巻き込むかにポイントが置かれているという見事な分析。オタクではなく「自分が欲しいかどうか」「尊 厳の欲求を満たしてくれるかどうか」がポイントとなりそうだ。しかもイノベータは深い商品知識をもっているので品質として完成度が高いものではならない。 知識、好奇心、可処分所得、自己実現…商品の規格やベネフィット、エッセンスといったところにこだわりが必要ということがわかってくる。
 では書籍の大ヒット…となるとこれがかなり難しい。書籍の購買層はいずれも可処分所得は高く当然自己実現もめざしている。価格にもある程度反応する需要者だが、やはり内容にる程度エッセンシャルな部分があると同時に、「感動」あるいは「ベネフィット」を与えるコンテンツでなくてはならない。1000円を超える書 籍となると競合する映画の劇場鑑賞以上にベネフィットがなければならないわけだ。インターネットでの評判よりも新聞の書評よりも立ち読みなどによる「印 象」のほうが重要で、となると内容のどこにも手がぬけないのが書籍という商品ということになる。競合する別の世界の娯楽やあるいは知識でいえばセミナーな どに負けないコンテンツを整理した形で市場に提供していく…。デジタル機器以上に厳しいマーケティング戦略をねっていかないとおそらく失敗続きが予想される業界のような気がする。

無形の力

著者名;野村克也;発行年(西暦)2006;日本経済新聞社;値段;1000-1500円
 一種の自伝でもあり一種の野球哲学でもある。壁にぶちあたったときの野村監督のスランプの克服方法が「本を読み打開策を模索」とあるのがすごい。現在の自分の頭だけでなく他の媒体にヒントを求めようとする姿勢はスランプ打開には適切な方法だと思う。土壇場の窮地においやられても「敗窮に勝機を知る」といっ たぎりぎりまでの努力とヒントの打開策。土壇場の苦しいときに諦めないかかぎりにおいては活路が開ける可能性がある、という意味だそうだが、土壇場ですべ てを放棄してしまうよりは前向きの姿勢ではないかと思う。自分自身の能力を知り、それにむかって努力してこそ道は切り開かれるという深いアドバイスがこめ られている。だれもがめざすわけではないが、しかし自分には向いていて公共的法的に社会に貢献できる道。まず自分自身を知ることと自分自身との戦いからそ うした道が始まるのだろう。 
 そして史上最も弱いはずの楽天は2007年8月18日に、球団最多勝利の48勝目をマーク。かつて近鉄とオリックスの合併騒ぎのさいに、オリックスによばれなかった選手たちが集められた…といったイメージから徐々に脱却。新人のマー君こと田中投手や怪我から復帰してきた一場投手など投手陣も徐々に充実。「無形」の力が「有形」の戦力を倒す…という野球の醍醐味を展開してくれている。

天使と悪魔のビジネス用語辞典  

書籍名;天使と悪魔のビジネス用語辞典;マーケティング;著者名;平野喜久;発行年(西暦);2004;すばる舎;値段;1000-1500円;A5版
キャプティブ価格政策、サプライチェーンマネジメント、ナレッジマネジメントなど経営学やマーケティングの用語のもつ「マイナスの側面」を実例や例え話を まじえて紹介した書籍。PPMについての意外な実話も紹介されている。読んでいるとなるほどと思うことが多いのだが、それあ理論的にはかなりスッキリした 説明であっても現実にはなかなか応用できないという企業経営の難しさからくるものだろう。理論の学習はムダではないと思うが、理論だけでつっぱしることの リスクもこの本を読んで考えさせられる。

算法少女

日本文学;著者名;遠藤寛子;発行年(西暦);2006;筑摩書房
もともとは岩崎書店から発行されていた小説が出版社が筑摩書店となり学芸文庫に収録。価格900円にもかかわらず一年たらずに3刷間で言っているし、新聞 でも報道された。「円周率を四角形を応用して(あるいは多角形を応用して)計算せよ」という問題はこの本の中でも出題されているが数年前の東京大学の入試 にも同じ趣旨も問題が出題されていたはず。つまり子供向けの本でありながらやっていることは結構高度な「和算」の世界でオランダにむけて学問の輸入を開始 し始める時期でもある江戸の安永の時代のお話。寺子屋や私塾でいきいきと学問にいそしむ子供たちの姿がたのもしい。そして数学や算数が日常生活でもはたし ている大きな役割をこの本によって感じた人も多いのではないか。ストーリーもちゃんと用意され、ちょっと変わった感じの時代小説にも分類できるかもしれな い。

定年後すぐゴケる人かえって若返る人

著者名;和田秀樹;大和書房;値段;1000-1500円
老人医療専門の精神科医がはなつ「気持ちのありかた」。「前頭葉の刺激に投資せよ」ととく魅力は、貯蓄型のライフスタイルから消費型のライフスタイルへの 変更を提案する書籍でもある。「ときめき」を大事にしたり、40代からの生活設計の重要性を説いている。実はもう「ずっと先」と思っていたことが次々と最 近おとずれてきており、準備はいろいろはやめにしておくことが最善の老後対策と考え始めた。ある程度基礎を固めておいてその後の10年間にまた次の飛躍を 遂げる…というプランニングをするのであればやっぱり「今」を「ときめいて」頑張る、そしてちゃんと計画をねっておくということになるだろう。

新しいお金  

書籍名「新しいお金」;コンピュータ一般 ;著者名;高野雅治 2007年;アスキー新書;値段;600-800円 個人的な評価☆☆☆☆
  PASMOやSUICAなどはすでに自分でも日常生活に使用しているが確かに非常に便利。これまでJRだけしか利用できなかったSUICAも他の民間鉄道 やバスとの相互利用を深めることで、自動販売機での購入以外にもキヨスクなどでの活用と用途がどんどん広がる。EDYについてはまだ使用していないのだ が、この勢いではコンビニエンスストアなどでの決済には電子カードが主に用いられることになるのかもしれない。この電子マネーに特定の利用者のIDが埋め 込まれればいずれ盗難などにあっても、利用者が特定される時代もすぐくるだろうし、治安という意味からも安心。しかも交通量に関する膨大なデータがJR各 社に蓄積されるため、そのデータを利用した新しいサービスも誕生するかもしれない。もっとも電子マネーの多くは小口現金に近いので生活がかなり便利にな る…ということで大きな変化にはつながらないかもしれないが、少なくとも「快適な消費」は楽しめる。

朝、会社に行きたくなる技術

著者名;梅森浩一;発行年(西暦)2006;日本実業出版社
「基本的に仕事では出来る人に集中」するので、ストレスを感じる場合には、仕事に優先順位をつけて分割してこなしていく…といった消極的あるいは積極的な対応が紹介された本。正直、それほど実践的に使える本でもないとは思う。「自分のものになるまで他人ノマネをする」(真似をつづける)ことでいつのまにか 自分のオリジナルの仕事の方法ができてくるなど、どちらかといえばタイトルのほかの部分に触発される部分が大きい。「相手の心に深く突き刺さる言葉」を用 意しておくなど、大人の作法も紹介されているがあんまりそういうのはどうもねえ…。仕事がでいる人は「白昼夢」も大事にする…といった人間的な要素についての考察のほうがずっと面白い。

新平等社会

著者名;山田昌弘;発行年(西暦)2006;文藝春秋
 気鋭の社会学者らしい統計データと仮説に満ちた書籍。生活分野の構造改革のためにどうするべきかという視点から現状の分析と将来への政策提案が行われてい る。「人間が自由に行動すれば格差は必然的に生じてくる」という非常に意味が深い箴言というか断定から導出される結論は、「狭い自分の視野」を拡大させて くれる。最初はどきっとするような断定が実は書籍全体を「読ませるための筆者の工夫」であって、あっという間にラストまで読んでしまう(あるいは読み進め てしまう)という「仕掛け」に満ちた文章構造。こういう文章の組み合わせの妙がまた素晴らしい。これまでの本で筆者が仮説の「たとえ」に用いていたパイプ ライン構造の分析がさらに精緻化。わかりやすくて面白い。ベストセラーになるのも当然かも。

大人のケンカ必勝法

和田秀樹;発行年(西暦)2004;PHP文庫
「勝っても恨みを買うと損をする」といった、ある意味かなり実用的な箴言が並ぶ文庫本。何かといえば「闘争」に走る市民団体などは、勝ち負けに相当にこだ わるのだが、その結果が「ギクシャクした人間関係」とかだと後味がワルイコトこの上ない。現実的な問題解決を重視するという本書はある意味では「大人の社 会生活の知恵」の紹介のようなもの。ある意味では敗北や失敗をもとにしていかに自分自身の改造や改良に役立てていくかという視点もあるので、「勝負」とか 「競争」とかにうたれよわい方には特にお勧めの書籍だろうと思う。グッドルーザーこそが最大の勝者という言葉もある(負けるが勝ちっていうことだと思う。 実際そのような経験は何度も私自身味わってきた経験則でもあり…)

すぐに結論を出せる考える技術・話す技術

著者名;和田秀樹;発行年(西暦)2007 新講社
気楽に考えて実行する…案外簡単そうで難しいことなのだが筆者がそのコツをこの本で伝授。「前よりはマシ」と考える習慣や二者択一よりも三者択一のほうが ベターなど、いろいろな物事の考え方を教えてくれる。選択肢がなるべく多い中から一番適切な選択をして迅速に行動する。意思決定理論の基本なのだが、結局 一番いいのがなんであったのかは、選択肢の結果というか実現した現実から類推するより他はない。そのときに「何もしないよりは良かった」と考えられるかど うかということだと思う。値段がもう少し安いといいのだが…。

大人のためのスキマ時間勉強法

 この本は最初は新書サイズ、そして文庫サイズとなって最近大型版が出たばかり。大型版も新書サイズも読んだのだがあらためて文庫本のような形で読んでみる と新鮮にも思えてくる。最近この手のノウハウ本はあれこれ筆者を変えて読むよりも、一定の筆者を固定化してその筆者のあらゆる本を読破していくことのほう が重要のように思えてきた。経済評論でも固定した一人の経済評論家のいうことを重視していくほうが、あれこれいろいろな意見にまどわされずにすむと思う。 得意分野を活用したり、気がのらないときはできることからはじめるといった些細な事柄が積もり積もれば結構な「分量」になっていることが多いと思う。

原典ユダの福音書

 日経ジオグラフィック社、2006年、2000円、西洋史関係。 
 グノーシス派の中に存在しているといわれた「ユダの福音書」。紀元2世紀後半にはこの「ユダの福音書」に言及したエイレナイオスの文章が残存していたが、 1978年ごろ、中部エジプトから発見された「ユダの福音書」。それを翻訳した「本文」とその解説を一冊にまとめた本。学者の詳細な解説があるので本文の 欠落部分もきにならないほど面白い。ナグ・ハマディ文書以上に歴史的価値があるとされるチャコス文書がいかにしてこのたび「復活」したのかも解説に記載。 2004年にはパリで「第8回国際コプト学研究協会会議」で発表された内容が1,800円で入手できる幸せ。ユダをまったく「通説」とは逆の形でとらえな おすイメージの豊饒さ…。形式的な「体系」がともすれば組織化された「ファシズム」にもなりがちなこの御時勢…。一つのコンセプトやイデオロギーにどまる 「キケン」を予告しているかのような「再発見」だ。

自分の考えを「5分でまとめ」「3分で伝える」技術

著者名;和田秀樹;発行年(西暦)2006;新講社
 なんと2006年12月発売にして2007年2月で10刷。ちょっとしたベストセラーになるのではなかろうか。「まとめ」の力というのは難しいがまずはや はり実践するのが一番。この本で一番面白かったのは、「自分をカリカライズする力」の重要性が解説されているところだった。自分自身を「笑いもの」にでき るかどうか、客観的に漫画みたいに思えるかどうか…といったあたりがポイントか。自分で自分を漫画にできるような力さえあれば確かにコミュニケーションの 力はつくし、コミュニケーションできる力がやはり基本。社会保険庁も「100年安心」とかなんとか難しい数値で煙にまこうとしている姿勢がみえるが、ここ はもう自分で自分を笑いものにすれば世間からどれだけ浮いた存在になっているかがわかると思う。「年金は強制徴収。強制徴収した年金をグリーンピアで運用 したが大失敗に終わりました。役人には商売は無理だということがわかりました」「年金徴収して自分たちの本を自分たちで監修して年金の中から個人的に着服 しました。これって役得」とかもう笑いものにしてから新しい組織に移行していただければ…。

ハンニバル・ライジング(上)(下)

トマス・ハリス;発行年(西暦)2007;新潮社
「レッド・ドラゴン」以前のハンニバルの少年・青年期を描く「羊たちの沈黙」シリーズ最新版。「ハンニバル」の原作のラストからして、その後のハンニバ ル・レクターの活躍というのは非常に続編を期待するのは難しいと思われたが、やはり「それ以前」の戦後の時代に回帰。1941年のナチスドイツのポーラン ド侵攻、バルバロッサ作戦にともないレクター一家は狩猟ロッジへ退避。そして終戦をまもなく迎える1944年。ナチスドイツとソビエト連邦の戦いにリトア ニアは巻き込まれる…。ドイツのチュートン騎士団をたたきだしたレクター一族の血をひくハンニバルは、共産主義の洗脳教育と家族を失った悲しみでよろよろ になっているところを、仏蘭西の叔父の妻ムラサキに救われる。しかし何かが壊れ、何かが生まれようとしていた微妙な青年期の「心」は次第に後の連続殺人鬼 が育っていくプロセスでもある。ヨーロッパの香りをまとうハンニバルが以外にも北欧貴族と日本文化の融合から生まれ、そして自由と資本主義がうずまくアメ リカにわたる…という「失われた魂」が再びゆがんだ「回復」そして「活動」をするにはふさわしい場所を選び出す…。本を読んでいるとあっという間に朝をむ かえてしまう上下巻。

受験勉強は役に立つ

s コンテンツ主義…「何を勉強するのか」ではなく、「いかにして勉強するのか」を重視するプロセス主義の立場にたつ。プロセスそのものが重要なのであって、 歴史の年号であれなんであれ、その中身はそれほど重要ではない…という考え方。これ、案外あたっていると思う。保健体育や家庭科などでは実習が重視される が、実習そのもの中身がそのまま社会生活で活用できるということではなくて、実習を「いかにして効率よく達成できたか」という方法論さえマスターすれば実 際の社会人生活に応用できる部分が増えてくるということなのだろう。数学や英語などは確かに未知の世界の中でいかにして情報を入手していくかという探索方 法のマスターにもなるし。方略思想や学習性無力感など心理学の知識も紹介されており、読みやすくて実用性の高い新書だと思う。

1日5時間で仕事を片付ける人の習慣術  

知的生産研究会;発行年(西暦);2007;PHP文庫
 記号と略字を使用したメモの処理、捨てる基準の明確化、ビジネス文書はテンプレートを作成するなどといった日々のメンテナンスの細かいアイデアが使えるケー スもあれば使えないケースも。クレーム処理の基本は謝罪と相手の言い分を聞くこと…あたりまえだがやはり御指摘をいただいたことについて謝罪ということな のだと思う…。他の書籍の紹介ページが一番使えるページのような気も。

変われる国・日本へ

著者名;坂村健;発行年(西暦)2007;アスキー新書
 トロンを発明した坂村健東京大学大学院教授の新書。オープンかつユニバーサルな商品展開やサービスの重要性を解く。「大まかに正しい」というベスト・エ フォート的な発想の重要性も解く。このオープンアーキテクチャの思想というのが案外面白い。アメリカのセーフハーバー規定などかなり特殊な情報までも紹介 してくれるので、ビジネスチャンスをこの本から発見する人も結構いるのではないかと思う。

「いい人」でも人生を失敗しない法

不適切な思考パターンから自分を追い込まないようにするための提言。物事は最終的にはどうなるかはまったく不明であり、先読みしすぎてネガティブに考えて しまうというのはあまりにも非生産的。メリットとデメリットを常に比較検討していく思考が大切ととく。「いい人」ほどそうしたネガティブ的な予測に走りや すいということかもしれないのだが…。内容とタイトルがちょっと合っていない様な気も…。

「挫折しない整理」の極意

著者名;松岡英輔;発行年(西暦)2004;新潮社
 材料と道具を分けて、材料は先入先出法で、道具は後入先出法で管理しろ…というのが面白い。付箋とか鉛筆とかいうものは古いものからつかっていって自分の ためになるようにどんどん消費していくべきもので、道具はパソコンのように最新のものから使い倒していくという発想だ。著者はさらに道具を①加工道具②仕 事道具③遊び道具④お洒落道具とわけていっているのだが、これは人それぞれかもしれない。ただコンピュータの「スタック」という処理は「上乗せ」という方 法で自動的に「スタックになるように」データを管理しているという指摘は非常に有効。さらに能力管理と道具の管理には密接な関係があるというのも納得がい く。ミットを大事にするのはキャッチャーにとっては必須のことだろうし、能力があればこそバットやミットの管理も慎重にしていくだろう。道具と材料という 2つの「見方」が蓄積できるという点ではわりと個人的には役に立つ本。

時代を生き抜く7大失業つの条件

ウィリアム・ヨーマンズ;発行年(西暦)1998;七賢出版
ダウンサイジング、インフレ、目減りする期待値、フラット化する社会。今は景気がよくんまっている(少なくとも数値上は)状態だが、これはリエンジニアリ ングが進められていたアメリカの経済事情を背景にして書かれたビジネス書籍。リーダーシップスキルだけでなく、フォロワーシップという概念も打ち出してい るところがどことなく日本的な感じもする。ただし日本社会では一時期ほどではなくても労働市場の流動化は進んでいくはずである。ひとつはなんにせよ雇用形 態の多様化が進んだことが最大の理由で、今は時代が変化して派遣労働者を正社員にという動きがあるが、もともと自由は勤務形態の好んで派遣労働者の道を自 主的に選んだ人も多いはずだ。このまままた元の長期定年雇用制度にまた戻るとはしんじがたい。いずれは定年後であれ定年前であれ、自分自身のキャリアの将 来的道筋について疑問をいだくときはくるはずだ。そのときのためにも、一種の備えは必要であろう。
 ひとつは新しいスキルを身につけることの重要 性。そしてレイオフへの備えである。技術革新の波が進めなモバイルパソコンがひとつあれば、世界のどこでもがすぐ「仕事場」になる。その中で大事なのは 「視点」をいかにずらして考えることができるかという能力だ。いろいろな労働契約と賃金で働く労働者が多様化していった場合、それぞれの立場で「評価」を することを著者は進める。たとえばCEOの立場で自分の仕事を見た場合にどうであろうか、といった視点だ。「小さくスタートして最大限の努力を払え」あま り劇的な会社改革ではなく小さな会社改革で十分ではないかと思う。著者ば一環して熟慮と慎重さを大事にしろ…と書いている。
 ストレスについて は、「パワーの源泉となりうる」という面に着目し、うまく利用していけば自分自身のスプリング・ボードとなることを著者は進めている。これは経験的に zぃっ間。ストレスにある程度苦しめられていないと確かに一定レベルの商品の提供は無理なのだ。ストレスの源を直視し、それを「整理・分類」する。まさし くデータの整理でストレスの原因を一種のチャートに指定舞うという方法だ。最悪の事態にそなえるのであれば、紙に書いて図表化するのが一番ということにな るだろう。
 組織再編についてもメリット・デメリットがあると思われるが、組織再編→顧客サービスの迅速化→仕事の精度の増加→会社の収益の上昇 というプロセスでないと意味がない。権限委譲にしてもノードストロームのように顧客のために長距離電話を使用させるなどの美談はそのお客様の口コミで 500人には広まる。実はこうした実例がコミュニケーション能力、リーダーシップ能力の分野でも展開される。「夢」といった場合に「部下にとって魅力の感 じられる目標」を設定るべきといったかなり具体的なスキルまで紹介されている。そして最後はやはり「顧客志向」という言葉。最終的に商品を使用するのはや はり消費者だ。消費者の便宜にそった内容にしていくことがなによりの「生き抜くための7つの条件」かもしれない。

Summer Sex  

著者・モデル;夏生ゆうな・荒木経惟発行年(西暦)1998年; 株式会社スコラ;価格3000-4000円
 いまからおよそ9年前の写真集。夏生ゆうなさんが当時何歳だったかは不明だが、もういいお年になられているはずだ。荒木経惟の写真集は女性が中心のように みえて実はそうでもない。飛行機の中からみた空、機内食事の写真、街角を日傘」をさして歩く写真といった何気ない生活感のある風景が連続する。一枚の写真 だけをとりだしてどうこうという性質の写真集ではなく、街や道路、川、コンクリートの落書きもまたメインのモデル以上に魅力を発する。そうした雑然とした 町並みの中で服を着た状態で挑戦的にカメラをみつめる夏生ゆうなの表情がすばらしい。脱ぐことだけが優先されるわけではない凡庸な写真家とは一線を「画する」カメラの動き方だ。徹底的に「顔」にこだわる部分ではモデルの表情の変化をただじっと撮影している。
 モデルというわりにはたいしたことのない幼児体型な のだが、表情は大人そのもの。おそらく「顔」「生活」「表情」そしてたまにヌード写真というのがアラーキーの写真集の構成なのだろう。今ではもうなかなか 古本屋さんでも入手しづらくなってきて荒木経惟の写真集だがブックオフに売るのも心苦しく、とはいえいつまでも抱えているわけにもいかないのでこの写真集 は印象的な場面心に秘めて「燃えるゴミ」の日に廃棄する予定。ウェブが発達してもおそらくこうした生活を捉えていく写真集へのニーズは絶えることはないだ ろう。ただしそれを手にとった読者もまた生活の中で生き延びていくために、いつかはまた荒木経惟の世界を忘れていかなければならない運命にある。

週刊東洋経済7月14日特大号

「ニッ ポンの公共サービスと公務員」がテーマ。天下り先に年間10兆円規模の国費が投入される一方で長時間残業などで自殺が増えている背景。そして国家公務員法 改正の内容が詳しく著述されている。戦後、あるいは戦前から官庁が慣行化してきた人材あっせんがいよいよ法律の手で新たな官民人材交流センターにゆだねら れることになる。天下り先の5割近くが独立行政法人、特殊法人、認可法人、公益法人という正直いって「あんまりはっきりしない団体」に再就職。そこからさ らに民間企業にトレードする人もいるかもしれないが、OBとの直接の関係を否定し、談合には厳しい処分をするという姿勢、さらに新人材バンクでも賃下げや 首切りもありうるということになっては、また別の「隠し穴」をみつえるか、あるいは本気で官公庁の人事体系を見直すことになるのかもしれない。次は公益法 人制度の改革だがこれを全体の一つのパッケージを考えて第二、第三の改革をうちだしてくるのであれば、公務員改革は確かに一歩前進するのかもしれない。小 さな政府といいながら実際にはかなり大きな政府で、しかもその大きな政府の規制だけでは市場の経済成長を読み取ることもコントロールすることもできないで いる。やはり英国やアメリカ並みに小さくて効率的な政府をめざしていくためには通らざるを得ない改革なのだろう。
 そもそも長期雇用安定だから公 務員を志望するという学生のこれまでの志望動機が間違っていたのではないか。労働条件もひどくて、しかも雇用の安定もないが、国家のために働く…おそらく これからの国家公務員志望者にはそうした真の意味ので「愛国精神」が必要な時代になっていくだろう。

夜子

著者名;荒木経惟;発行年(西暦)1996;風雅書房
 1996年当時は新人女優とされた夜子。その後の人生の展開は不明だが、少なくともこの荒木経惟が撮影した写真の中では「謎」「希望」に満ちた不可思議な 笑みをうかべる。服をきているときのほうがエロティックで脱いでしまうとまたなんでもない裸体が写真にでてくるのは荒木経惟の写真の特質だろう。黒のワン ピースにお寺のそばをただじっと歩く後姿にこそ日本の美があるようにおもわれる。
 それにしてもこの写真集の値段が3500円。今ではなかなか市 場ベースにはのりにくい写真集だと思うが、当時はまさしくこうした日本の伝統文化の中に切り込んでいく荒木経惟の写真は一つの前衛だったのだと思う。今、 それから約10年。この写真集も「私自身」が捨てるときにきたように思う。美も伝統も写真もいつしかは違う形態へと移りいくものといえるだろうか。

週刊東洋経済4月29日・5月6日「企画書超入門」  

「売れる本はどうして売れるのか」「読者のコンプレックスに訴求する」…このくだりが妙に気になって忘れられない週刊誌になってしまった。もちろんメイン テーマとは関係がない一文なのではあるが。企画書のポイントはなるべく1枚の紙に集約して、「相手が求める企画書」であるかどうかということになる。会社 でいえば、事業展開がしやすく利益をあげやすい企画でないとなかなか通らないということになるのだろう。ソニーの事例でいえばロケーションフリーという家 の中に一台おいておくだけで世界中どこにいても自宅の居間と同じようにテレビ番組を楽しむという発想。またアイデアを拡散→集約→ビジョンと練り直してい く方法。大胆な目標数字。読ませるよりはみせる図でパワーポイントを構成。本はコンプレックスで売れるという集約に達したならばそれをいかにビジョンにつ なげていくかは確かに楽しみつつも「わかりやすい」企画書でなければならないだろう。雑誌の特集にしてはなかなか読み応えのある特集だったが、結果的に は、努力と練習以外にはやはりないんじゃないかな、というのが読後感…。

週刊東洋経済4月14日「畑村式数の極意」  

「数の極意」という特集ではあるのだが流通業界の再編から学習方法まで幅広い特集で非常に面白い。日本国勢図絵、世界国勢図絵はこの特集でも違う著者から 「使える」とされている。物事を数量的にとらえるのに、日本国勢図絵はやはり名著の部類に入るようだ。「数を避けて通るのはものすごくおろかで、損で、 もったいない」という畑村氏の言葉が重い。「見える化」を促進させるというメールの書き方も面白かった。タイトルと導入部分で目的を明示。内容をグループ 化して見出しやスペースで視覚化。さらに「グループ」ごとのエッセンスを示す、と具体的なアドバイスがてんこもり。さらに「脳の仕組みと科学的勉強法」 (ライオン社)という貴重な勉強本も知る。「できる人の勉強法」もそれなりに役にはたつようだ。この手の本はある程度読み込んだら、次々捨てる。というこ とで、この特集を読んだ日に約40冊の書籍を廃棄。たくさん読んで、次に読み直す本はやはり絞り込んでいかなければならない。流通業界では来年4月からの 薬事法の改正の「特集」が面白い。一般用医薬品の分類が変わり、リスクが低いとされる下の2クラスの医薬品については薬剤師がいなくても「登録販売者」で あれば販売できるようにする。つまり風邪薬などがコンビニエンスストアなどでも購入できる時代が2009年4月から日本に到来する可能性がある。販売規制 の緩和になるので当コンビニエンスストアも参入してくるだろう。利益率が高い医薬品や化粧品でキャッシュを集め、食品や雑貨の安売りで集客をしていく…。 従来のドラッグストアの販売方法が見直され、その一方で過剰な出店やその割には延びない売上高が企業そのものを疲弊させていく構造が指摘されている。かつ ての銀座での英国ブーツ、フランスのセフォラ、そしてマツモトキヨシの戦いもまた「歴史」となり今度はコンビニエンスストア対ドラッグストアの競争が過熱 していきそうだ。

超手帳術

著者名;野口悠紀夫 発行年(西暦)2006;講談社
手帳やメモの使い方に悩んで、もう一度開いてみたのがこの本。目的や目標などを手帳に記してもやはり無駄というか、本当の目標はやはりメモとか手帳ではな く自分自身の「頭の中」にあるものではないか…と思ったのがきっかけだ。それよりモバイルとメモの使い分けをどうしたら効率的か、というのが現在の緊急の 課題である。電子媒体に向いているのはやはり編集機能や索引機能で、アイデアやto doリストなどはメモや紙のほうがむいているらしい。また時刻表をデジカメで撮影するなど、書類をスキャナで保存するのではなく、画像として残しておく方 法があることをこの本で学ぶ。やはり書類のサイズの標準化は必要でそれは野口悠紀夫氏にかぎらず現在ではA4サイズに統一するしかない。今ではもうクリア ファイルも含めてすべてA4に自分自身でも統一しているがメモもA7サイズなどのほうがいいのかもしれない。また新聞や雑誌の切り抜きなども「あまり活用 できていないなあ」と思っていたのだがこの本でも切り抜きだけではやはりだめと指摘されている。メモは自分のためだけの貴重な情報源ということでいったん 自分のフィルターを通しているからこそ次の活用がきくということかもしれない。自分に必要な情報をいかに選別するか、ということがメモやモバイルの本当の 役割になるのだろう。さてメモは1冊になるべく限定するべきだが、それ以外についてはほかの本で知ったバイブル方式のリフィルをしばらく利用してみるつも りである。クリアファイル・バイブルノート・メモ・デジカメ・モバイルといったあたりが、しばらく情報活用の自分の道具ということになるだろうか。

週刊東洋経済「イオン恐るべし!」(2006年12月16日号)  

週刊東洋経済「イオン恐るべし!」(2006年12月16日号)  2006年12月16日の特集だが、発行から7ヶ月以上が経過して読み直してみると非常に面白い部分がみえてくる。まず何某食品会社のMBOをめぐり、少 数株主を締め出すための既存株主の保有株が1株未満の端株になるようにして、新会社法の規定により端株しかもたない株主に対しては金銭を交付するだけで足 りるという規定の事例。組織再編の柔軟化が進行した結果、少数株主保護のルールが未整備な点が指摘されている。また特集されているイオングループについて の情報も満載。規制緩和を利用したショッピングセンターの出店とM&Aによる多数の企業との緩やかな連携。ダイエーの事業パートナーであると同時に、ジャ スコ、マイカル、マックスヴァリュ、いなげや、カルフールジャパン、ボスフール、タカキュー、タルボット、オリジン(出資比率は96パーセント)、」ミニ ストップ(51パーセント)、ツヴァイ(出資比率82パーセント)などなど。さらにメーカーとの直接取引や物流システムの改革などめざましい勢いのイオ ン。小売業は流通で言えば下流に属するだけに付加価値をあげるためにより川上産業へのぼりつめていく必要性があるがイオンはそうした上流工程への進出も視 野にいれていたわけだ。

グーグル明解検索術

別冊宝島編集部;発行年(西暦)2006
  グーグルで検索することが増えてきたのだが、やっぱりインターネットの便利さと限界の両方を感じる。本当に調べたいことって実は書籍とか事典の中に眠って いることも多く、ネットで調べられないことは結局図書館などで解消するしかない。逆にネットでは展開できないことを出版物などでは提供していかなければな らないのだが。グーグルのキャッシュ機能ってちょっと怖いかもしれない。ロボット型検索なのでアップロードするつもりがない画面などもキャッシュで保存さ れているケースもあるなあ、などと思いつつこの新書を開く。「人気の高い商品を検索するにはランキングでアンド検索」「ヤマト 伝票番号」で宅配便がどの あたりにあるのか検索。通貨換算検索、テキスト翻訳、filetype検索。ちなみにパーソナライズドホームはさっそく導入してみた。コンテンツの追加な どでオリジナルのポータルサイトが作成できるのがうれしい。さらに過去5年間のウェブを保存しているというwaybackmachineというインター ネット図書館、経路検索のハイパーダイヤ、不動産検索のスマッチ、中古品の相場を知るヤフーオークション、曲名検索の「うたまっぷ」など便利な検索機能を 700円でかなり効率的に理解することが可能。これまでにもかなりのグーグル本は出ていたが、この新書はかなり使える。