2013年9月17日火曜日

知的文章とプレゼンテーション(中央公論新社)

著者:黒木登志夫 出版社:中央公論新社 発行年:2011年 本体価格:800円
 わかりやすくて論理的で、しかも一定の読者層に受け入れられる本は,手にとった段階ですでにスタイリッシュだ。中央公論新社の新書は全て同じデザインなのに、やはり書店の本棚にあるときから、一味違う。
 第一に「超整理法」「理系のための作文技術」といった名著の内容をふまえて著述されているので、21世紀にふさわしい新しい文章論が展開されている。しかも既存の議論もふまえたうえでの新しい内容だ。
 第二に医学系論文の審査にたずさわってきた著者の文章論なので,文章を書くうえで陥りやすい「わかりにくさ」「過ち」が指摘されている。
 第三に英語によるプレゼンテーションや論文執筆の経験から、日本語による論理展開を国際標準でとらえることができる。日本語特有の文章論だと、「てにおはの使い方」や「接続詞の使い方」といった文法論から書き起こす必要もでてくるが、この本で重視されているのは「言いたいこと」をいかに簡潔明瞭に著述していくべきかといった技術論だ。名文を書くのには一定の修練が必要になる。しかしわかりやすい文章を書くという技術論であれば新書を読むことで習得することは十分可能だ。
 「近代的な論理展開」の世界だとやはり因果関係や結論の導出方法はかなり重要になる。ビジネス文書の枠組み以外に,論文執筆やあるいはこうしたブログであっても、論理展開が重要な場面がある。一回読んですぐ試行できる内容や、章ごとにまとめられた箇条書きの要約が嬉しい。