2008年1月28日月曜日

手帳とノート魔法の活用術

著者名;和田茂夫 出版社;技術評論社 出版年;2006年
 いろいろな人が薦めている本なので読んでみたが、なるほどと思った。自分なりの「仕組み」を作ることが大事で特定の人のノウハウを直接「移植」することについては懐疑的なスタンスで書かれているのがいい。上手に手帳を使うと、自分経営にもなるというコメントにもなるほどと思う。個人の好みを優先させつつ「いかに視覚的にわかりやすく情報を整理するか」という一連の流れが「あれでもない、これでもない」といった手帳めぐりをせずにすむということになる。ある意味では「殴り書き」のメモであってもいかにそれを「整理」していくべきか…という自分なりの「仕組み化」につながるわけで、さすが理系向けの書籍を多数出している技術評論社ならではの「手帳論」「メモ論」というべきか。

2008年1月27日日曜日

プロフェッショナル仕事の流儀

著者名;茂木健一郎&NHK「プロフェッショナル」製作班 出版社;NHK出版 出版年;2007年
 盲導犬訓練士、バレリーナ、半導体メーカー、競馬調教師、デザイナーの各職業のプロフェッショナルが仕事を通じて得た「感覚」について主に語る。こうした職業での「感覚」をいかにひきだしていくのか。茂木健一郎が見事な質問技法をみせる。「目と目があうコミュニケーション」以外に馬とはそれ以外のコミュニケーションも必要な雰囲気をただよわす「勝負は厳しい」というようなコメントが、読んでいる読者にはさらに厳しい。やる気がない場合にはやる気がない原因(目標が定まらない、悩み事がある…)といった根本的なところを解決しなくてはならないが、そうしたやる気についてはプロの方々はそれぞれ独自にやり方があるようだ。「気持ちをデザインする」というデザイナーさんの言葉が重い。自分ははたして使い勝手のいい「商品」を製造してきただろうか、どうだろうか。読者にも課題を投げかけるNHK出版の名作インタビュー集だ。昨年末12月20日に出版。

「超」WORK HACKS!

著者名;小山龍介 出版社;アスコム 出版年;2007年
 この本でもフレームワークの提示が重視されているが、それよりも「自己実現などより公共の福祉など」より高次な観点で仕事を見つめなおすというアドバイスが非常に面白い。確かに社会的にはだれも他人の自己実現などには興味がないわけだし。ライフハックで重要なのは「謙虚さ」という言葉も重い。確かにある分野に足を踏み入れると、さらにその奥にいる専門家の努力の凄さを知り、さらに謙虚にならざるをえない…ということはよくあることだし。「理解する前に記憶する」という方法も確かに有効だと再確認(いったん記憶した知識と知識の関連付けをどうするのか、が勉強の一つのポイントだと思う)。

裁判官の爆笑お言葉集

著者名:長嶺超輝 出版社;幻冬舎 出版年;2007年
 元司法試験受験生の著者が、ライターとして裁判所を訪れて、裁判官の言葉の中からえりすぐりのものをタイトルに。さらにその裁判官の発言の裏事情などをテキストにまとめた新書。発言だけみるとエキセントリックにみえた裁判官の発言だが事件の裏事情や弁護人の訴訟の方式などいろいろな諸事情があって、「発言」に至ったことがわかる。21年間逃亡した後に出頭してきた男への判決など、いろいろな被告の人生もかいまみえて奥深い。芸能人や野球選手など有名人が関係した事件の判決については「第3章」でさらに別立て特集もされている。

2008年1月25日金曜日

会計基礎論(第3版)

執筆者;渡辺泉、小谷融ほか 出版社;森山書店 出版年度;2007年
 非常に多様というか、会計の歴史からグリーンアカウンティングまで幅広く題材を取り上げている。個人的には会計の歴史のくだりが興味深かった。ルカ・パチオリのエピソードについてはよく聞くが、考えてみれば「なぜイタリアで複式簿記だったのか」ということについては考えていなかった。しかし、現金収支の単式簿記だけではだめだった理由の一つに債権債務のやりとりという信用取引の拡大。そして13世紀のイタリアが当時北ドイツのハンザ同盟や南ドイツの商業大都市ニュルンベルグやアウグスブルグをおしのけて信用取引を拡大させた理由を①まずイタリアが東洋と西洋の接点として地中海沿岸のあの地域に位置していたこと②1096年から1270年まで十字軍の遠征があり、北イタリアのジェノバ、ミラノ、フィレンツェなどが食料や武器、資金の提供基地として機能したことなどが説明されている。もちろんそれに付随した決済機能も備えてなければいけないであろうから、信用取引の拡大や為替手形の普及により銀行を中心とした商業の繁栄を北イタリアは迎えることになる。これがそもそもルカ・パチオリが「ズンマ」を執筆する下地となる「商業実務」を構築させた…という流れだ。物々交換や現金決済では確かに複式簿記はさほど必要性がない。債権・債務という信用取引と文書記録の必要性、財産保全の必要性などがあって初めて複式簿記のうまれてくる「必要性」があったと考えられる。さらにこの本ではフィレンツェの「期間組合」という企業形態を紹介。この「期間組合」が複式簿記を生成させ、19世紀イギリスの複式簿記に成長しつながっていくという説明が非常に面白い(37ページ~38ページ)。さらにこれまで不勉強だったが日本の会計学研究に大きな影響を与えたというヘンリー・ランド・ハットフィールドの「近代会計学」という書物や「代理商」のもとでの委託販売や受託販売が中心になると「正味財産の比較による財産法的損益計算はほとんど意味がなくなる」「フロー中心の損益計算」が必要になってくるという流れもまたわかりやすい。積送品販売や受託販売はいまでも複式簿記の学習領域だが、フロー計算の源流が委託販売や受託販売にあったわけだ。(フロー計算への流れにいたる前に実地棚卸によるビランチオについても紹介されている)。さらに情報管理と会計情報の有用性などを第4章(201ページから219ページ)、管理会計や国際会計基準などもカバーしている(230ページ~244ページ)。
 その一方でFASBの「資産とは過去の取引または事象の結果としてある特定の実体により取得または支配されている発生の可能性の高い将来の経済的便益」「財務方向は報告することそれ自体が究極の目的ではなく経営ぴょび経済的意思決定を行うために有用な情報を提供することを目的としている」というステートメントが適切な位置に挿入されているのも魅力。

 もっともほめっぱなしでばかりではなく残念な面もある。169ページから170ページは旧商法にもとづく著述で「営業権」という勘定科目が残存。資産負債観の説明が174ページと14ページとで微妙に重複。192~193ページでは2007年4月10日発行であるにもかかわらず2006年3月期に導入された減損会計について「導入前の著述」になっている、などの問題点はある。ただ大学やそのほか自学自習で複式簿記を学習するのには、手ごわいがかなり面白いテキストではないかと思う。「幅」が広いだけに初学者に向くかどうかは別として読んでみて非常に知的面白さにあふれた本であったことは間違いない。

2008年1月22日火曜日

知らないと怖い高血圧

著者名;藤田敏郎 出版社;平凡社 出版年度;2007年
 「生活の質」をいかに維持しながら高齢社会を生きるべきか、という視点からメタボリックシンドロームに始まり、血圧管理の重要性を説く。東京大学医学部教授の本だけあって数値データや症例がかなり細かく紹介されている。早期発見、早期治療の前に「生活の改善」を重視する姿勢に好感がもてる。望ましい食生活についても細かく書籍の後ろのほうで紹介。ナトリウム以外に最近個人的に注目しているカリウムについても、「細胞の働きを正常にしてくれる」と紹介。カリウムを多く含んでいる食材も掲載されている。そのほか血管拡張機能をもつマグネシウムやカルシウム、有酸素運動のしかたなど具体例がもりだくさん。新書サイズでここまで詳細に解説してくれているのはありがたい。

世界性生活大全

著者名;桐生操 出版社;文藝春秋 出版年度;2007年
 単行本を文庫化したものだが、よくもまあ、ここまであれこれエッセイ風に面白くまとめてくれたものだ…と思う。エロスの章、結婚の章、ファッションの章、トイレの章と4つの章に区分され、人工ペニスやハイヒール、コルセットなどの「物理的道具」に関するエピソードや性病や純潔協定などの文化史、結婚にまつわる「不能裁判」など世界史の中から「性生活」に関するエピソード(とシモネタ)をうまく読み物風にまとめてくれている。ローマ・ギリシア時代から19世紀まで、読み通していると、人間ってあまり時代に左右されないで、いろいろ「生活の知恵」を働かせているなあなどと感慨にふける思いも…。ただこうしたエピソードは2000年以上も人類が生活している中でえりすぐりのものばかりだから、逆に考えると大方の「普通の人々」ってエピソードにもならないことの蓄積だったようにも思える…。本体価格571円。文藝春秋らしからぬカストリ雑誌風の「表紙」もまたなかなかいい。

2008年1月17日木曜日

手帳200%活用ブック第2版

出版社;日本能率協会マネジメントセンター 出版年度;2005年
 「ほぼ日手帳」について糸井重里さんと和田裕美さんの対談が収録され、またマッキンゼーのコンサルタントをへて会社をたちあげた南場智子さんのインタビューなど内容的には非常に濃い手帳術。ただし日本能率協会出版社の活用術ということで超整理手帳などちょっと異色の手帳についてはあまりページがさかれていないのが残念といえば残念。忘れるためにメモをするとかやるべきことを見える化して一覧性をもたせるためにメモにするとか人によって活用方法は違ってくるが以前と異なり超整理手帳を軸にして無印良品のA5サイズの手帳を組み合わせる方式でスケジュール管理その他をこなすようになってみると、他の人の手帳の活用方法の「良い部分」を自分の手帳にさらに加えてカスタマイズしていくのが一番のような気がする。その意味ではやはりA4サイズの紙だけで構成できる超整理手帳は便利だし、無印のA5サイズの手帳も半年ごとに買い換えられるという点で非常に便利。

レバレッジ時間術

著者名;本田直之 出版社;幻冬舎 出版年度;2007年
 「仕組み化」と筆者が表現するのはコンサルタントがよく口にする「フレームワーク」ということとほぼ同義だろう。フレームワークをしっかり構築してそこに「再現性」をもたせる。節約という経済的行為であればつかの間のバーゲンセールに遭遇した一回性のものではなくて、もっと安い生活必需品を効率よく入手できるフレームワークを構築して再現できるようにする工夫が大事ということになる。そのために筆者は時間割を非常に重視しているのだが、なんども反復するような行為もしくはプランなどがあればそこに一種の時間割を導入して、効率的な時間の過ごし方に再現性をもたせると究極の時間の節約になる…ということなのだと思う。意思決定をするのであれば情報収集をしっかりとする。当たり前のことのように思えるがこの本ではやはり時間節約と時間活用のフレームワークを提出しているのが目新しい。単に節約するだけではない、といったところがポイントか。

2008年1月16日水曜日

グーグル裏活用本

出版社;ダイアプレス 出版年度;2006年
 実際にグーグル使っていると本当に便利になったなあ…と思い、それでさらにいろいろな「活用本」も読んだりするのだけれどどれもいまひとつ。アレクサやgmailもやはり活用はするけれど、別に本で読まなくちゃならないほどのことはなし…。裏とはいっても結局torrentを併用するケースがメインなのでグーグル単体というよりも、むしろファイル共有ソフトとの併用活用ということになる。正直、ファイル交換ソフトのリスクの高さは重々承知してるのでイクラ便利とはいってもそこまではしたくない…ということで「まっとうな活用方法」ということになると案外ウェブであれこれ試行錯誤するのが一番のようだ…

すぐ結果がでる「15分」活用法

著者名;和田秀樹 出版社;新講社 出版年度;2007年
 15分で一つの区切り…とするとやはり机の周りの整理って確かに気分転換になる。さらに夜の15分をメモの整理にあてるというのも落ち着く。やってるはずのものがあるかないか、なんてことが案外夜の睡眠にも影響したりして。著者のいいたいこと…は「気分的な要素で変動する一日の成果」を15分の「気分転換」や雑用処理でうまく安定化できないか…ということだと思う。メモの整理や机のまわりの掃除自体が目的ではなく、あくまでもそれは「安定した生産性」を維持するための一つのアイデアを考えたほうがよさそうだ。60分あるうちの4分の1に区切って単純な作業を一つこなすというアイデア、確かに効果があるし、実際すでに実践しているものも多数紹介されている本。

求心力

著者名;ジョン・C・マクスウェル 翻訳;斉藤孝 出版社;三笠書房 出版年度;2007年
 集団行動の中でもだれかが求心力となるように機能しないと、とんでもない方向に集団が走り出す。志の継承(バトンを渡す)とか人の話を聞く、他人の立場を考える…といったようなこと、結構当たり前のように思うが、これができていないケース、結構あるんだなあ…。「結論を急がないで話を聞く」というあたりが個人的には非常に印象に残った。どうしてもある程度効いた範囲内で結論をだしてしまう癖みたいなものがある。がケースによってはいきなり「決断」するよりもまず「問題点」を共有すること自体が一つの問題解決への一歩前進につながること…確かにある。

2008年1月8日火曜日

できる人の勉強法

著者名;安河内哲也 出版社;中経出版 出版年度;2006年
 勉強に投資すれば…式の勉強本だが社会人の読者よりも高校生などの受験生のほうが励まされる内容かもしれない。歩いている時間や待ち合わせの時間も勉強につかえる…といった隙間時間的なことまではさすがに社会人の領域かもしれないが…。東進ゼミナールの現役の先生ということもあってか英語に関する勉強方法の創意工夫の技の紹介が多い。一種のベストセラーにもなったと思うがやはりこれは社会人向けというよりが学生向けなんだろうなあ…。

年収10倍アップ時間投資法

著者名;勝間和代 出版社;ディスカバー 出版年度;2007年
 この本いきなり10万冊を超えてしまったようだ。私は1刷を読んだのだが、「結果を定量化」して「効果の測定」をするというあたりと、「やらないことのほうを先にきめる」というのが現実的な方法として受け入れられたのではなかろうか。巻末の参考文献リストやパソコンなどのハイテク機器の紹介も非常に楽しい。現状の課題を発見して問題解決を図るのにはこの本といったお勧め書籍の紹介も読者にとっては親切だと思う。原理原則というか時間管理のフレームワークを個人個人が作り上げてそこにこの本のエッセンスを詰め込む…といったカスタマイズして利用していく方法が紹介されているのが、また売れる理由なのだろうと思う。

すごい人のすごい企画書

著者名;戸田覚 出版社;PHP 出版年度;2006年
 企画書には相手のベネフィットが示されていなければならない、という基本理念から「目次」や「表紙」の重要性までかなり詳細に企画書のあるべき姿をといてくれた本。実際にこの本に書かれているノウハウをプレゼンなどでも一部活用したが、取り込む前と取り込んだ後とではやはり大きな違いがでた。目次があるとそれだけでしゃべる内容が一覧できることがやはり便利。さらに時間内にどれだけ効果的に訴求できるかといった点にも気をつけるようになる。一種のノウハウ本だが「それほどこったものを作る必要性はない」という基本理念が気分も楽にしてくれる。

2008年1月7日月曜日

判断力の磨き方

著者名;和田秀樹 出版社;PHP 出版年度;2007年
 メタ認知など筆者がかねてから主張していることに加えて、「選択的抽出」の危険性について説かれている部分が印象的。いわゆる「一を聞いて10を知る」という考え方だが、一部だけで全体を判断してしまうリスクは実生活にも結構ある。さらに重要な出来事をなんでもかんでも「たいしたことがない」と決め付ける「縮小視」のリスク、感情的な部分で物事を決め付ける「情緒的理由付け」など判断をミスリーディングさせる人間の心理の奥深さを解説。完全主義思考をすてていかに合理的な判断を下すかを解説してくれる新書サイズのビジネス心理学入門書。

超手帳法

著者名;野口悠紀夫 出版社;講談社 出版年度;2006年
 やはりどう考えても名著。手帳という概念をA4サイズで統一化して、しかも利用者の便宜におうじてカスタマイズできるようにした最大の発明。「本はメモの集合体である」といった何気ないセンテンスがまたしびれる。仕事を分解してなんとか「8割がたの完成をめざして進む」という仕事の方式も非常に有用。最初から320ページあるとわかっているものに0から取り組むよりもまずはその8割の完成をめざす…というのが合理的でもある。もちろん既存の手帳が無意味になったということではなく、それはそれで利用価値はあるのだが、スケジュール管理やto doに関してはこの超整理法にまさるものは今のところない。おそらく考えをまとめたり、蓄積型のノルマのチェックなど普通のノートで充分だと思うし、逆に差込式の超整理法にはそぐわない部分もあるのかもしれないが…。これからますます発展・進化していくことが期待される超整理手帳の理論部分を紹介してくれる名著。

「1日30分」を続けなさい!

著者名;古市幸男 出版社;マガジンハウス 出版年度;2007年
 「数年前の過去の蓄積で私たちは収入を得ている」というややどきっとするような指摘が印象に残る。確かに生まれてからこれまでの過去の蓄積(教育とか経験とか)があって今の自分があるわけで、そうした指摘から、「今自己投資をしなければ5年後、10年後は…」といった論理で展開されていく形式。さらに「太く短く」よりも「細く長く」のほうが楽…ということで表題の「一日30分」になったようだ。個人的には一日15分でも充分だと思っているが、続けないよりは続けておいたほうが確かに効果はあがる。というよりも今をさかのぼること約5年前にいろいろ自分なりの勉強計画を5年計画で立案してみたのだが、その試行錯誤は5年後にちゃんと「残存」しているので、やはりこの本の著者のいっていることが正しいという思いはする。現在この本の続編もベストセラーになっているらしいが、さすがにしかし、購入するかどうかは現在検討中…。

小説ドラゴン桜~特進クラス始動編~

著者名;里見蘭 出版社;講談社 出版年度;2005年
 漫画やテレビのこの人気シリーズはちょっと見る気がしなかったが、5冊完結編の小説だと読む気にもなったので手にとってみる。非常に面白いし、大人にとっても役立つノウハウが詰め込まれている。単なるエンターテイメントとしてとらえるよりもグループ別記憶法や「緊張と緩和の繰り返しで成果がえらえる」などのノウハウ。さらに、「環境」「思い込み」からいかに自分を解き放つかといった小説ならではの設定が非常にユニーク。「広く」「浅く」「確実に」というキーワードが戦略としてもなかなかのもの。

UMLは手段

著者名;荒井玲子 出版社;技術SE新書 出版年度;2007年
 UMLは統一モデリング言語のこと。SE向けの新書だしUMLなどさわったこともないが、ツールはあくまでも支援にすぎず、技術やノウハウはUML以外の分野で習得しなければいいソフトウェアは開発できないという著者の主張が伝わってくる。新書サイズでこうした技術系の書籍が購入できるのは門外漢としてもありがたい時代だ。優れたモデルの特徴として「拡張性」や「保守性」があげられ、(コンテンツの)関連が明確で、(図式化すると)図がシンプルである…といった指摘はソフトウェアのみならず、ハードウェアの製品にもあてはまることではなかろうか。特にマーケティング関係の理論だけでコテコテの商品を開発してもなかなか売れないといった場合には、商品の構成要素を図にするととてつもなく複雑になってしまっている可能性が高い。SEの読者のみならず他の業種の人間が読んでも非常に有用な技術関係の新書だと思う。

1冊の手帳で夢は必ずかなう

著者名;熊谷正寿 出版社;かんき出版 出版年度;2004年
 ついに「スターターキット」まで発売されてしまった熊谷氏の手帳術。「夢」「行動」「思考」の3つの手帳に分類すべき…と、とことん「3」にこだわる。実際にはこの本の中からエッセンスだけを取り出して、基本的には「超整理手帳」に自分なりに落とし込もうとしているのが私のやり方(スターターキットは他にもたくさん発売されているが、手帳の使い方が限定されるのはちょっといや…というのが自分にはある)。電子手帳よりも一覧性などにすぐれる手書きのメリットは確かにそうだと思う。「目でみて手でふれられる目標」というフレーズも非常にわかりやすい。パソコンを起動させないと見れない目標やスケジュールというのは非常に不便なものだし。パソコンとアナログの境目は一覧性の有無で分別できるように思う。

戦略的な考え方が身につく本

著者名;西村克己 出版社;中経出版 出版年度;2006年
 ビジネス書籍というよりもマーケティングの入門書と考えたほうがいいだろう。「二眼レフ構造」など同じ業種の店が同じ地域に出店するメリットなどを説明してくれる。また強者の戦略、弱者の戦略ということでマーケティング戦略の一点集中のメリットなども解説。「いい商品を作ってもなぜ売れなかったのだろう」とQCDで分析(品質、コスト、納期)で戦略を見つめなおすなど、どちらかといえば企業の中でも商品のラインナップを構成したり、企業戦略に興味がある立場の方には読んで損がない本だと思う。いくらいいプロダクトができてもプロモーション(販売促進)がうまくいかなければ製品は売れないという指摘が耳に痛い。「他社にない特徴ある製品を発売」とは非常に簡単だが、その後のフォローや顧客ニーズにあわない「奇妙な商品」では販売市場に食い込めないことも理解させてくれる。

朝、会社に行きたくなる技術

著者名;梅森浩一 出版社;日本実業出版社 出版年度;2006年
 「クビ論」を展開していた著者が「会社に行きたくなる技術」を書くというのも不可思議だが、人事部出身のビジネスパーソンであれば、「行きたい日もあれば行きたくない日もある。気分転換のスキルも仕事のうち」みたいな割り切りがあるのかもしれない。ま、行きたくないけれど行くしかないというのが会社も学校も同じだが、どうしても行きたくなければまた別途の方法を考えるというのが大人のあり方かもしれない。究極の結論はポジティブ志向ということになりそうなのだが、それもなんだかなあ。しかしポジティブでなければ少なくとも未来に新たな可能性が開けることはない…というのはあるわけで…。とはいうもののこの本、169ページに時事通信配信の面白い記事が掲載されていたのが面白い。女性のストレスのトップは「夫」、男性のストレスは「会社の上司」「取引先」「会社の部下」の順番なんだそうだ(5月20日配信記事)。ストレスの源は「子供と同じ」だったら「あなたが大人にならなきゃどうするの」という文章に究極の結論がありそうだ…。

ぼくの血となり肉となった500冊そして血にも肉にもならなかった100冊

著者名;立花隆 出版社;文藝春秋 出版年度;2007年
 「ねこびる」と通称言われている立花隆氏の書籍を収納したビルの写真などを見るたびに、どうやってこの膨大な書籍や資料を整理しているのかと不可思議に思う。経済、文化、哲学、映画、性、風俗などさまざまなジャンルの書籍を読破し、そしてあの科学から歴史にいたる奥の深い書籍のアウトプット。読書日記そのものも読書ガイドとしてはかなりハイレベルな目録として機能するが、約200ページにわたる立花隆氏本人のインタビュー、そして巻末の細かい索引に担当編集者の意気込みがみえる。こうした書籍を読むとちょっと寂しくなるのは、立花隆はもしかすると「次の世代」に何かを託そうとしているのではないか、と思えるフシがみえる点だろうか。単なる書籍紹介ということにとどまらず、次の世代に何かを残そうという意思がみえなくもない。ただし、立花隆氏のようなノンフィクションライターの「次」を担える人…そう簡単には出てこないと思う。

情報整理術クマガイ式

著者名;熊谷正寿 出版社;かんき出版 出版年度;2005年
 情報整理というと立花隆氏や野口悠紀夫氏の整理術が今ではかなりメインストリームと位置づけられるが、この熊谷氏の情報整理術も非常に参考になる。パソコンのフォルダを3つにしてその中にファイルを分類するなどすでに導入してその便利さを享受している。情報をなるべく一箇所に集中させておくというのも原始的だが確かにその通り。なるべく視覚的にみやすい位置にファイルやコピーをまとめておくのが基本でしかもいらないものはどんどん捨てていくというのがやはり基本。すべてをデジタル化してしまうという方法もあるのだがスキャナにかける時間がある意味無駄だし。「探し物をする時間」をなくしていく…という発想は大事だとこの本を読んで痛感。

1日5時間で仕事を片づける人の習慣術

著者名;知的生産研究会 出版社;PHP 出版年度;2007年
 かなり膨大な数の自己啓発書籍を一冊の文庫本にまとめたもの。やるべきことを目に見える形でリストアップしておくなど「あたりまえ」のように思えることが実はできていなかったりするからなあとため息をつきたくなる感想をいだく。巻末に膨大な書籍リストがアップされているのでこの文庫本からそうした各書籍にさらに進んでいくのが理想的か。「書類は積まずに必ず立てて収納する」という簡単で、しかし役に立つアドバイスも。確かに横にしてしまうともうどこにどの書類があるのか検索不可能になるので、多少面倒でも何らかの形でラベリングして「縦」に置くほうが検索が後でしやすいのは事実。

パソコンマナーの掟

著者名;きたみりゅうじ 出版社;幻冬舎 出版年度;2006年
 きたみりゅうじさんのSE関係の本は非常に面白いのだが、いかんせん内容がちょっと古いかなあというのが印象。ログインしたまま放置するのはやめたほうがいい…とかいわれても「確かに…」としかいいようがなく…。ただ個人情報の重要性その他についてはこの当時からはさらに厳しく取り締まる方向に世の中が向かってきている。デジタル技術とともに、社会倫理みたいなものもかなり大きく変動するのだなあと感慨深いものも。

動画共有究極マスター

出版社;花園新社 出版年度;2007年
 定価500円で動画共有サイトの動画のダウンロード方法などを解説。youtubeなどは最初は非常に「熱狂」したが今ではわりとさめた感じでみていたりもして…(実際、ある程度ダウンロードすると、見ていないで保存することに熱中してしまう傾向もあり…)。おそらく最初はだれもかれもがダウンロードに熱中していくがいずれは同じようなコンテンツに飽きてくる→やはりあれこれ手を加えた本物志向の動画あるいは映画に向かっていく…という流れになるのだろう。ただ巻末の動画共有サイトのURLや特徴などの紹介は便利。おそらくこうしたサイトのうち本物志向のサイトだけが生き残ることになるのだろう。

個性を捨てろ!型にはまれ!

著者名;三田紀房 出版社;大和書房 出版年度;2006年
 一種の「型」を大事にする…というこれも伝統的な発言だが、やはりある程度生きてみると確かに「常識的なライン」を維持している人のほうが、「伸び」が大きいのは事実。あまり自由放任という形で個性的な生き方をするよりも、ある程度は世間的にいう「まっとうな礼儀」とか「マナー」などが維持できていないと、この世の中、論理では説明できないことのほうが非常に多いわけで…。ということで、実はこの著者の「ドラゴン桜」シリーズも非常に大ヒットをとばしたが、ある意味では本音で世間の「本当の気持ち」を漫画にしたものといえる。本音がなかなかいいにくい世の中で、こうして漫画やビジネス本という形で伝統が継承されていくというのも21世紀的な形なのかもしれない…。

野村ノート

著者名;野村克也 出版社;小学館 出版年度;2005年
 楽天が昨年4位となった。西武ライオンズやオリックスをおさえての4位だから、かつて近鉄が「解散」したときに屈辱をあじわうしかなかった選手には感慨深いものがあると思う。また中日を解雇された山崎のホームラン王も一種の「快挙」であろう。これまで投手中心の「敗者復活」「再建」が有名だった野村監督だが、ヤクルト時代の小早川選手も思い出されるような打者の「再建」の手腕も見事だ。集中力を高めるのは、「興味」と「必要」、原理原則を大事にする…といわばそれほど無茶なことをといているわけではない。ただそうした原理原則をどこまで貫くことができるかが、おそらく「凡」から「非凡」へ進化していく分かれ道なのだろう。天才型の人間にはおそらく読んでも興味のわかない本かもしれないが、努力型の多くの人間には野球に関係ない場面でも非常に示唆の富む内容が満載。

金融商品会計

著者名;田中健二 出版社;新世社 出版年度;2007年11月
 棚卸資産会計基準にくわえて金融商品会計基準の改正なども行われた時期に、ピンポイントで名作の出版が嬉しい。価格は2700円だが、中身と対比すれば非常に安い価格設定。金融商品会計に興味のある人には買って損をすることはないだろう。割引現在価値としてはおおきく10,000円を超えている充実の解説。新世社にはこうした硬派な出版企画がシリーズとして定着しているのが嬉しい。ただシリーズの中には昔でたまま改訂されていないものもあり、同じシリーズだからといって中身や出版年度を確認しないで購入するのは危険。やはり2008年初頭であれば、2007年秋ごろ以後の出版物が一番安心できるだろう(それだけ会計学の書籍は現在陳腐化が激しくなっている)。巻末の主要参考文献も非常に有効な書籍リストとして活用できる。

2009年国際会計基準の衝撃

著者名;橋本尚 出版社;日本経済新聞社 発行年度;2007年
 「日本的会計の終焉」という章も含む2011年までのコンバージェンスの流れをかなり細かく解説してくれた本。やや出版後、細かな情勢の変化はあるもののこうして最新の情報を素に書籍で解説してもられると新聞記事などで散発的に報道されることがらに「まとまり」がでてきて理解しやすくなる。価格1,700円だが、価格の割りに情報が豊富。IASのプロジェクトごとの年表も掲載されており、今後の日本のASBの動きも予測しやすい内容となっている。IASBとFASBのノーウォーク合意などについても解説してくれているので、これもまた会計の専門書を読むときに横においておくだけで役に立つこと必定。

世界一やさしい問題解決の授業

著者名;渡辺健介著 出版社;ダイヤモンド社 出版年度;2007年
 問題解決スキルを色刷りでわかりやすく解説。ここまで簡略にしていいのかとおもうぐらい簡潔でしかも「たとえ」を用いて分かりやすく解説。こうした分野の専門書への一種の入り口となるだろうか。ただ目標を立案したあと現状を分析。そのギャップを埋めていくという作業がなかなか実際にやってみると難しい。仮説をたてたあとはある程度実行もしないとチェックはできないし…。ただいきなりMBA入門などの問題解決の書籍を読むよりも明らかにこの本で「下地」を作るほうが、効果は迅速にでると思われる。

超整理手帳2008スペシャルBOX

著者名;野口悠紀夫 出版社;講談社 出版年度;2007年
 初心者用のスターターキット。ただしいろいろな人の超整理手帳の使い方などが紹介されていて非常に興味深い。初めて購入して使い始めて3ヶ月。もはや手放せなくなった超整理手帳だが、この手帳、A4サイズでさえあれば、もはや「書類とじ」に近い感覚でカスタマイズができるのでスケジュール管理や書類の保存などパソコンと連動させるのには確かに非常に都合がいい。しかもいらなくなった書類はそのまま破棄してしまえばいいので、現在、このスターターキット以外に透明のクリアファイル方式の超整理手帳も購入して現在2冊をフル稼働中。スケジュール管理はもちろん1冊に集中しているがそれ以外の業務用あるいは個人用の情報はすべてA4サイズで統一してどちらかの超整理手帳にとじこんで、時間が経過してからファイリングすればいいという次第。オリジナルのリフィルはパソコンで自作すればいいので初期投資の2,200円以外はだいたいもはや追加コストはゼロに近いというコスト的にも非常に安い手帳。年末年始のあらゆる手帳関係の新商品にふりまわされないで済むというのもありがたい。

人生に奇跡を起こすノート術

著者名;トニー・ブザン 出版社;きこ書房 出版年度;2000年
 入手したこの本の発行は2000年だが、2004年版で16刷。かなり安定したロングベストセラーだがそれだけこのマインドマップという手法が使えるノート術ということかもしれない。ただし、おそらく原始情報としてトニー・ブザンが提唱している方法よりも、実際に活用している人のだれかのマインドマップを参考にしたほうが自分には合っているのかも。確かに項目の整理などには非常に有効そうなのだが敷居が高いと思わせるのには充分な「方法」の数々。項目の羅列をいかにつなげていくか…という手法をもう少しわかりやすく説明してくれている本があるとありがたい。定価は1,500円。ビジネス書籍としては一種の相場どおりの価格設定か…。

時間管理術を学べ!!

著者名;ジョン・カウント 出版社;ディスカバー社 出版年度;2006年
 新書サイズの変形版だが価格がなんと1000円。「翌日のプランは前日までにたてる」とか当たり前のような気もしないではないが、読者対象は社会人になりたての20代前半なのかもしれない。情報は焦点をしぼるとかあたりまえのことが羅列されているのだが、こうした「あたりまえ」が実は現実にはそうならない…というのが非常に難しいところで…。たとえば会議の司会を上司がつとめているときに、「議題の焦点を明らかにしてください」などと発言するのはかなり勇気がいることだし、ある意味では「墓穴をほっていること」にもなったりする。原理・原則を学習しておいて、実際にどうしてそうならないのか…という理論と現実の「違い」を分析することが大事なのだろうと思う。たとえばもう「自分がしゃべりたいことをしゃべる」という習慣が定着してしまった人間がいた場合に、余計な波風をたてないで穏便に議題を進行させるという「技」、こうした「技」については大人の判断で場面場面に応じて自分なりにアイデアをひねりだしていくしかなかったりする…。

脳をめぐる冒険

著者:竹内薫・藤井かおり 出版社;飛鳥新社 出版年度;2006年
 童話調でしかもかわいいイラストつきで、ある日突然に自分の「脳」の中を少年と旅する青年の話。一種科学的でもあるのだが、やはり大人のための童話ともいえるのかもしれない。脳の中身を旅していくうちに根源的な自分の中に忘れ去っていたものを見出す物語…といえばこれまでファンタジー系ではいくつかみられた素材だがそれを科学的な話で展開するとどうなるかという実験作品ともいえるだろう。ある意味コンテンツを詰め込みすぎて失敗しすぎた印象もあるのだが、実験作品とわりきればしょうがない面もある。ストーリー仕立てで何かを説明しようとする手法は一時期はやったもののケースによっては図版一枚を印刷したほうがより具体的な説明になるケースもありバランスが難しい。ともあれこうした書籍をまだ印刷して編集しようという意欲が飛鳥新社にみられるのは嬉しい。

頭のいい人の「質問力」と「返事力」

著者名;和田秀樹 出版社;新講社 出版年度;2007年
 「感情に左右されない」返答というのを筆者は別の書籍でも繰り返し強調されていたが、この本でも「返事をするならば事実にもとづいて」、「質問をするならば感情に左右されない」ことを非常に強調している。会議などでも実際によくあることだが極端に感情に左右された発言は、周囲の人間の自由で活発な議論を妨げると同時に、悪感情はすべての論理性をむちゃくちゃにしてしまう。これだけそのことはある意味社会常識であるにもかかわらず感情が抑制できないケース。それは当人の未成熟ぶりを逆にアピールしてしまう結果となる。「気持ちのいい返事」「明るい返事」ってすごくエネルギーがいるのだが、でもしかし日常生活のさまざまな部分でレスポンスの仕方は逆に相手に非常に大きな影響を与えるのもまた事実なのだと再認識。

2008年1月6日日曜日

続「「超」・整理法 時間編

著者名;野口悠紀夫 出版社;中央公論社 出版年度;1995年
  昨年までのこの濫読ぶろっがーには2004年11月から2007年7月ごろまでに書いたものを閉鎖されたサイトから移動してきたものがほとんど(一部新規追加したものもある)が、今月から新規作成されるものは、ほとんどリアルタイムで読後感を読み終わった月日にあわせてアップロードできる。さてベストセラーを記録した「超整理法」だが、角2の」封筒に書類をいれて時系列に並べて整理するという方法には失敗したが、時間を視覚的に把握するという基本理念には今でも賛同。12年遅れて超整理手帳を導入したが、パソコンからのプリントアウトとの「整合性」がやはりこの手帳が一番。アイデアノートなど個別のメモ帳の充実度も完璧だし、まとまった理論などのメモやタスク達成などの表は別の無印良品のA5サイズの手帳と併用しているが、非常に使いやすい。「一年間」を52週間に分割してスケジュールをたてるわけだから、一年間の時間配分も視覚的に理解できる。2008年をむかえて当時はまだアナログのメディアしかなかったにもかかわらず、時間という資源をいかに「見える化」していこうか、といった試みがこの高い水準でまとめられているのは嬉しい。今後10年たってもおそらくこの本は時間管理術の名著として数え上げられることだろう。

TIME HACKS!

著者名;小山龍介 出版社;東洋経済新報社 出版年度;2006年
 「レバレッジ」シリーズとともに2007年に非常に売れた「ハック」シリーズ。なんでもかんでも「ハック」がついているとつい書店で手にとってしまう…という感じになっていたが、元祖はやはり東洋経済新報社のこのシリーズになるだろう。ベルグソンの時間とニュートンの時間など時間の「質感」も考慮したタイム・ハックス。「集中力を高めるための喫茶店リゾート」というハックにはなるほど、と思う。いや確かに無意識に喫茶店に「逃げ込む」ときは自分にもあるのだが、目標管理やスケジュール管理などに目的を限定して喫茶店を利用するという方法。かなり有効だと思う。集中力と一言にいってもいろいろ内面的な種類があるとは無意識に思っていたが、「今後は同時進行的なジャズ的集中力」とずばっと分類してくれるのはありがたい。無意識に自分が感じていてそれがフレームワークとして確立できていないときが一番焦る瞬間だが、こうして誰かが「本当はこういうことなのだよ」と明晰に分類してくれていると既存の「なんとなくやっていたこと」が本当は理にかなったある種のフレームワークにそったものが理解できる。経験や信用の蓄積といったものと時間の過ごし方の問題とがリンクしてくるのもありがたい。というのも「経験」「信用」というものがリターンとして非常に大きなものであるにもかかわらず市場原理というのはそれを貨幣に換算しようとして換算できないシステムになっているからだ。「ブランド」や「のれん」「伝統」はいずれも実際に換金化しないかぎり自己創設のれんとしてしか機能しないが、日本社会の本来のあり方は「経験」と「信用」から成立している。特にデジタル社会になればなるほどこの「信用」という無形資産は大事になってくるはずなのだが…。時間のハックスというよりも、本当にこの本が売れた理由は「わからなかったこと」「あいまいだった常識」をずばりずばりキーワードで読み解いてくれた点ではなかろうか。

2008年1月3日木曜日

スッキリわかる日商簿記2級商業簿記

著者名;滝澤ななみ 出版社;TAC出版 出版年度;2007年
 おしゃれな白い表紙とグリーンの取り合わせのカバー。中身は蛍光色のピンク色と黒い文字だが、これは人の好き好きではあろう。色使いが激しい分だけ、イラストの線をもう少し少なくしたほうが見やすかったかもしれない。しかしこのA5サイズの書籍のもっとも大胆なのはその項目の並べ方ではなかろうか。だいたい30分ほどで読み終わったが、いきなり「株式会社とは」から入り、剰余金の配当と処分、そして合併、無形固定資産、繰延資産、社債と株式会社会計でもわりと「骨のある部分」を前半に配置。そして無形固定資産とは別個に後半に有形固定資産をもってきたり、有価証券や銀行勘定調整表をもってきている。もしかすると3級である程度学習した事項は後半で復習させてまずは株式会社会計を叩き込むという発想なのかもしれないが、目次そのものはかなり大胆な構成だ。わかりやすいかどうかはまた同種類の書籍が多数出版される中、受験生にとっては選択肢が増えたということでいいことなのかもしれない(一種類しかないとそれしかもう読むしかないが、読んでいて相性が悪いと思えば別の参考書や問題集に変更すればいいわけだし…)。

本の秘密

著者名;素朴な疑問探求会 出版社;河出書房新社 出版年度;1995年
 「印税」という言葉の由来や紙の大きさが常に1;√2になっている理由をわかりやすく説明してくれる。また返本された本がたどる運命についても解説していてくれたり、書店の店員さんが新刊本の仕入れをどうやって決めるのかについても紹介。いずれも巻末書籍の要約本ということで若干踏み込みが足りない面が多いのはやむをえないとしても「本好き」「読書好き」には役に立つ情報が多いだろうと思う。ただしもっと深い理由についてはやはり巻末に挙げられている参考書籍にあたっていくのが一番いいのだろう。一種の「ブックガイド」のための「ブックガイド」か。

ザ・マインドマップ

著者名;トニー・プザン 出版社;ダイヤモンド社 出版年度;2005年
 マインドマップという言葉自体はだいぶ定着してきたが実はまだこうして実際にマインドマップを活用するまでの領域にはなかなか達していない。ただし「手書き」が基本というのと最低限A4の紙があえばノートが作成できて項目の整理がつけられるというのは確かにメリット。特定のフォーマットなどは実はカスタマイズするのに非常に不便だが、ある意味このマインドマップには「公式」的な約束があるようでそれほどないのが利点。現在愛用しているA4サイズもしくはA5サイズの超整理手帳との相性もいい。途中で書きかけのマインドマップを超整理手帳に挟み込んでもいいわけだし、この点は白紙1枚で応用可能という意味で貴重なスキルだと思う。プレゼンテーションにはなかなか使いにくいと思ったが、項目の整理や項目の整理を通じてなにかの新しいコンセプトを打ち出すといった場面ではわりと使える。また一度書いたものを整理しなおしてさらに整理することで体系的にしていくという方法も他の場面で使える考え方だと思う。後はもう少しだけ、初心者が入りやすいようにすればもっとマインドマップ的な要素は世間に定着するのではなかろうか。発想自体は非常に優れた方法だと思うが、「敷居」が高いと思わせてしまう要素がどこかしらにあるのが残念。

レバレッジ勉強法

著者名;本田直之 出版社;大和書房 出版年度;2007年
 他のレバレッジシリーズは東洋経済新報社だが、この本は大和書房。2色刷りとなっており、読みやすいことは読みやすい。勉強道具にこだわるべきとかビジネス書籍の内容を実践できるのは読者のうち25パーセントなどといったチップスが面白い。勉強の対象を希少性やROIといった観点でチェックするのもユニークといえばユニーク。ただしこればかりは個人差が大きい分野ともいえるが…。目的やファイリングの見直しなどある意味すでに日常的にやっていることなどを別の角度で説明されるとちょっと「実現性があがる」ということはいえるかもしれない…。

3分で「モチベーションを高める」技術

著者名;和田秀樹 出版社;新講社 出版年度;2007年
 モチベーションの維持・管理って結構難しい。おそらくはなんらかの「努力の蓄積」が見える形のほうがモチベーションは高まるのだと思う。さらにこの本では「魅力ある計画」を常にたてておくことや「達成した仕事」と未達成の仕事の振り分けなどが提唱されている。モチベーションは「ほうっておくと低下する」という和田先生らしい人間らしい哲学がまた魅力。どんな人間も自然体ではモチベーションなど維持できるわけがなく、そうした欠陥があるところから、どうやってやる気を出していくのかがポイントなのだろう。あまり肩肘はらずにモチベーションの維持管理をするのにはこの本の内容が実践的でお勧め。

新訂現代簿記(第4版)

著者名;中村忠 出版社;白桃書房 出版年度;2007年
 簿記入門書としてはあまりに有名すぎる本の第4版。宣伝用の帯には「会社法」対応と記してあったが、残念ながら一部に(たとえば282ページなどには「繰越利益」、「未処理損失」との表示が…)旧商法会計の名残もあるがやはり勘定科目の書き方や帳簿のつけ方など基本に忠実な点は一橋大学の会計学の伝統継承を感じる。本支店会計などには補遺として直接控除法についても説明。検定試験についても配慮がみられ、一部に更新されていない部分があるとしても大学の教養学部などのテキストとしてはまだまだ利用されることが多いだろうと思う。個人的には91ページに掲載されている固定資産台帳の具体的な図や130ページから131ページの受託販売勘定のあっさりした説明がやはりわかりやすいと思う。補遺の「手形割引の処理」も支払割引料勘定に対する著者の考えがみられて興味深い。第4版から2色刷りとなり、わかりやすさもさらに増加したうえ、ある程度簿記学習が進んだ方にもお勧めの一冊。あとはといえば価格が現在本体価格1905円。もちろんこうした簿記専門書籍の市場性が現在厳しいのはわかるのだが、もう少し値段が下がると嬉しい。

レバレッジ・シンキング

著者名;本田直之 出版社;東洋経済新報社 出版年度;2007年
 昨年〈2007年〉にかなり売れたビジネス書籍のキーワードとして「ハック」とこの「レバレッジ」シリーズがあげられるだろう。少ない労力で最大の成果をあげるのにはたしかになんらかの「レバレッジ」が必要になるが、パーソナルブランドをいかに構築していくか、というノウハウをレバレッジという言葉に凝縮してしまうところがすごい。シリーズ化してしまうと、1冊目を購入した読者は2冊目も購入できるし、なんといっても副題の「無制限の成果「4つの自己投資術」といったつけかたがうまい。4つの自己投資というように限定されるとやっぱり「どれどれ?」と手に取りたくなるのは人情。なにかしらの本を会議参加者が全員読んできて「共通言語」を構築してから会議をはじめるという「レバレッジ」(効率性の追求)も好感がもてる。ただ、あとの興味はこのレバレッジシリーズがどこまで続けられるかというところにつきてきた。4つの自己投資術という限定がされているので、最大5つまでがシリーズ化できるとして、次はどういう分野の書籍を出版するのだろう…という…。シリーズ化の難点はどこかで目先をかえないとシリーズ全体が「陳腐化」してしまうという点にもある…。

新学問のすすめ

著者名;和田秀樹 出版社;中経出版 出版年度;2007年
 「人の平等を保障しない世の中」という前提にたって勉学の必要性を説く本。考えてみると少し前には勉学をすればそれなりに可能性が開ける…というのは当たり前の前提だったように思うが、そうした「前提」がもうないわけだな…。強制される勉学から自由に勉学する時代に変化したわけだが、そうした「自由」の世の中では、勉強しない自由も保障されているわけで…。となると、別に日本史や世界史の年号など暗記したり数学の公式を暗記するよりも世の中楽しいことは確かにたくさんある。が、なぜゆえに「勉学が必要か」「勉学は娯楽になりうるか」といった「大前提」を議論しなければならなくなったのだろう。ある意味豊かな時代の反映ともいえると思う。書籍を読まなくてもかまわない時代になったわけだし。

 でもなあ…。おそらく強制される勉学は非常につまらないものではあるがなるべく早くに「強制されること」にもなれておいたほうがいいように思う。「自由に…」なんでもできることって実は世の中にはそう多くはなく、そうした自由な場所というのにはたいてい「眼に見えないお約束」というものが存在する。そうした「目にみえないお約束」って結局勉学でしか蓄積できないものでもあるわけで。たとえば食事にしても一定の場所ではすべて給仕さんがすべてしてくれるわけだが、本当のディナーって会話の中身。一定の知識水準が保障されていないとそれだけで「目に見えないルール」違反ということも充分にありうるわけで、そうした「ルール」の存在は、一定の「学問」の上でしか蓄積できないってことはあるんだよなあ。「学問のすすめ」とは、この本の著者とは違う意味で、確かにどんな時代でも言えることだと思う。

得するウェブ活用法

著者名;創藝舎 出版社;三笠書房 出版年度;2006年
 ウェブ活用方法というよりもいわゆる「web2.0」という用語の解説に近い。ロングテールなどの現象を説明。アマゾンの倉庫が千葉県市川市にあるなど具体例の著述がちょっと嬉しい。SNSなどの発展やウェブ2.0だからIT企業が発展するというのは「ちょっと違う」というのを著者なりの理論で説明してくれている。活用法というよりも、一種の近未来予測に内容は近いと思う。まさかRSS機能やグーグルの使い方を活用方法とは普通言わないだろうし、タイトルと内容がちょっと「違う」というのとロングテールばっかり2~3回重複して出てくるのが、面白い…(というよりもこれは「編集上」のミスかもしれない…)。ウェブで勝つには圧倒的なシェアがなくてはならないという趣旨には激しく賛同。ただし、もう少し内容的に「使い方」にふさわしいノウハウがあると良かったかも。

2008年1月2日水曜日

裁判長!ここは懲役4年でどうすか

著者名;北尾トロ 出版社;文藝春秋 出版年度;2006年
 裁判所の傍聴をエッセイ風につづった一種の体験型ノンフィクションの力作。霞ヶ関の東京地方裁判所の傍聴を通じて主に刑事裁判(一部離婚などの民事裁判も)をメインにかなりの「判例」が紹介される。かなりの大事件も混在しているのだが、「被告人の大半は自分の気持ちを裁判ではうまく表現できない」という指摘が重い。ある有名な刑事裁判の被告の「空虚な涙」と「弁明」を評しての著者のコメントなのだが、「よくできた被告」「よくねられた反省の弁」が必ずしも被告本人の心情とは無関係ということが指摘されている。もっともそうした形式的な反省ですら裁判で表現するつもりがない場合には情状酌量の余地なし、ということになるのだろうが…。

レバレッジ・リーディング

著者名;本田直之 出版社;東洋経済新報社 出版年度;2007年
 読書を「自己投資」として位置づけて、いかに書籍の内容を活用していくかという観点からのノウハウ。一年に400冊のビジネス書籍を読むという著者のアイデアが紹介されている。読書は確かに投資でもあるけれど「消費」という見方もでき、活字のうちいくつかはたしかに「貯蓄」して「投資」していくというルートをたどるが、だいたいそのほとんどは「一時的に消費」されておわる。著者はノートというかサマリーを作成してその持ち歩きを推奨されているのだが、まあ、抜書きを確かにどれだけ自分のものにできるのかが読書の「実現化」の苦しいところかもしれない。そもそも文学作品を読むときには投資というよりも、どちらかといえば救済に近い面もあるわけで。
 といいつつ、「罪と罰」などは自分の本棚にはまだ置いてある。ビジネスとは無関係なようでいて、この「罪と罰」は今でも仕事の折に役立つ面が相当ある。どこからどこまでがビジネス書籍で文学作品なのかは線引きが難しいが、まず「質」より「量」といったところ、読書には確かにあるんだよなあ。それを10倍にするか100倍にするかは、また人それぞれか…。

娼年

著者名;石田衣良 出版社;集英社 出版年度;2004年
 母親をなくし、その傷をひきずりながら大学生になったリョウ。20歳になったが大学の授業に参加する気にはなれない。ある日会員制ボーイズクラブのオーナーと知り合い、その世界に飛び込むが…。激しくドラマチックというわけでもなく、なたとてつもない惨劇が起きるわけでもない。考えようによっては夜の街のどこかではありふれた話なのかもしれない。どこかに傷ついて、どこかに頼りたい人たちがある「ボーイズクラブ」でめぐり合い、お互いを癒していくその姿はまるでサナトリウム。淡々としたストーリー進行の果てにみえてくるのはセックスシーンの描写を超えたいわゆる「純愛」と「思いやり」の世界…。