2007年8月19日日曜日

ハンニバル・ライジング(上)(下)

トマス・ハリス;発行年(西暦)2007;新潮社
「レッド・ドラゴン」以前のハンニバルの少年・青年期を描く「羊たちの沈黙」シリーズ最新版。「ハンニバル」の原作のラストからして、その後のハンニバ ル・レクターの活躍というのは非常に続編を期待するのは難しいと思われたが、やはり「それ以前」の戦後の時代に回帰。1941年のナチスドイツのポーラン ド侵攻、バルバロッサ作戦にともないレクター一家は狩猟ロッジへ退避。そして終戦をまもなく迎える1944年。ナチスドイツとソビエト連邦の戦いにリトア ニアは巻き込まれる…。ドイツのチュートン騎士団をたたきだしたレクター一族の血をひくハンニバルは、共産主義の洗脳教育と家族を失った悲しみでよろよろ になっているところを、仏蘭西の叔父の妻ムラサキに救われる。しかし何かが壊れ、何かが生まれようとしていた微妙な青年期の「心」は次第に後の連続殺人鬼 が育っていくプロセスでもある。ヨーロッパの香りをまとうハンニバルが以外にも北欧貴族と日本文化の融合から生まれ、そして自由と資本主義がうずまくアメ リカにわたる…という「失われた魂」が再びゆがんだ「回復」そして「活動」をするにはふさわしい場所を選び出す…。本を読んでいるとあっという間に朝をむ かえてしまう上下巻。

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