2007年12月24日月曜日

潰れない会社にするための12講座

著者名;吉岡憲章 発行年(西暦);2002 出版社;中央公論新社
 企業がなぜ潰れるか、について実地の修羅場を経験した人間がそのプロセスを語る。倒産というのは法的用語ではなく法律上は①会社更生②会社整理③民事再生④破産⑤特別清算という形になる(民事再生法ができる前までは和議だった)。倒産すると会社は「死ぬ」がそれはまず税務署の差し押さえから始まる。税務署に手形で税金を納付する場合もあるが、これは「期限の利益の喪失」ということで差し押さえにあい、取引銀行の口座もすべて停止される。さらに社会保険庁が口座を差し押さえるケースもある。給料に先取特権があるといったって、実際には税金や社会保険料のほうが優先される。民事再生法でもこうした税金等の差し押さえは免除されないのだ。財産保全命令がでても、割引手形の回収を次に命ぜられる。顧客が銀行口座に振り込んだお金はすべて銀行へ。さらに債権譲渡予約が実行されて、債権はすべて銀行の手中におさまるという手はずだ。著者は映画「タイタニック」と会社倒産をなぞらえるが確かに共通する部分が多いともいえる。会社更生法では3分の2、民事再生法では50パーセント以上の債権者の同意が必要となるが、かなり高いハードルということになる。
 成功した経営者の講演会等については著者はかなり批判的である。成功したポイントはヒトによってかなり個人差があるものだからであろう。新規事業というのにも批判的だ。大企業が情報収集力を駆使して参入しているこのご時勢に、目先は支出しかありえないからである。経営の目的は、利益の確保であり支出と収入のバランスをとること以上のものでも以下でもない。売上高はいくらでも経費をつぎこめばあがるが、利益の獲得はきわめて難しいのだ。ましてやデフレ不況なのだ。売上高を伸ばす、と意気込んでも銀行は多分陰で失笑しているであろう。年商10億の会社が利益率を5パーセントから10パーセントにあげれば、売上が二倍になったのと同じ効果があるのである。
 最終的には3年から5年かけて、手形の支払いゼロ、銀行借り入れゼロ程度まで目標にするべきなのだろう。法人税等が大体46・85パーセントとすると利益の半分は税務署がもっていく。だから経常利益率は10パーセント以上は常時確保できるだけの経営体質にもちこんでいく必要性があるのだ。借入金の売上高の50パーセント以下抑制。これがデフレのもとでは、重要な指標となるのだろう。
 かなりシビアな経営分析だが、失敗から得る話ほど実践に役立つことはない。備えあれば憂いなしである。こうした重要な本がもっと出版されるとよい。しかし出版したのが経営困難に陥った中央公論新社というのも妙に因縁めいているが‥

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