2007年12月25日火曜日

野村克也「勝利の方程式」

著者名;永谷脩 発行年(西暦);1996 出版社;三笠書房
 自他ともに認めるヤクルトファンということもあるが、野村克也氏がヤクルトに就任してからのこのチームはまるで生まれ変わったかのように勝負強い野球をするようになった。野球はもちろんゲームなのだが、ただ単に面白い・楽しいだけではなく集団スポーツであると同時に、サッカーなどとは異なり単に足が速いから盗塁を決められる、腕力があるかたヒットが打てる‥といった単純なものではなく「頭脳」を働かせる余地が大きい。時間がかかるという批判もあるがこれは時間がかかる分、もちろん選手も観客も考えているためなのであり、きわめて知的なスポーツなのだ。
 野村克也氏が監督に就任するまでは、どちらかといえば「才能で野球をする人」が主流であったのに対して、「才能がない分頭を使って野球をする人」というのが増えてきたような気がする。私はこの野村克也氏のB級選手をいかに組み合わせて試合に勝つかという「こだわり」から数知れない多くのものを学んだ。それはおそらく自分自身がB級の人間であることを認めることから始まり、ではどうすればいいのかといった実現可能な方法論を考えることにつながったからだ。思うに大企業の役員に巨人ファンが多いのに対比して中小企業にヤクルトファンが多いのは、B級選手と自社の社員とをオーバーラップしているにほかならない。そして、実際に中小企業が大企業をしのぐ場面もみられるようになってきたのである。誰もがやっていることをちゃんとやるのはあたりまえだが、それをさらに高めようという意欲は誰しもが持っているわけではない。正しい努力とプロセスを重視する態度こそ野村監督の手法であり、そしてそれはまた偶然にも認知科学の教えるところとほぼ一致しているのだ。この本をこれからも何度も読み返すに違いない。

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