2007年12月27日木曜日

死海文書 蘇る古代ユダヤ教  

著者名;高橋正男 発行年(西暦);1998 出版社;講談社
 おそらく死海文書がマスコミに脚光を浴び始めたのはイエス・キリストの新たなイメージや謎を解き明かす鍵としてこの死海文書が有用と考えられていたためではなかろうか。しかしそのイメージはおそらくほとんど間違いであり、古代ユダヤ教のテーゼや生活習慣などを理解する特別資料であることには違いないが、巷に流布しているイメージはほとんどあてにならない。旧約聖書のヘブライ語版については紀元10世紀までが限界だったのが、この死海文書では紀元前にまでさかのぼる。ユダヤ教とヘレニズムの相互影響、ユダヤ教と原始キリスト教とのかかわりなど地道ではあるが、興味深いテーマをこの本では追求している。なお巻末には現代語訳の死海文書も掲載されており、地道な歴史学者の真摯な書籍として評価されるべきだろうと思う。ロマンはないが。

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