2007年12月26日水曜日

コンメンタール国際会計基準Ⅴ

著者名;広瀬義州  発行年(西暦);2000 出版社;税務経理協会
日本の企業会計は現在、取得原価主義体系と資産負債アプローチとが混在する型式となっている。資産負債アプローチは数理的に完成されたきわめて美しいモデルだが、個人的には中小企業にそれを求めるのには無理があるのではないかと思っている。とはいえ部分的にでも企業会計原則がかつて支配していた分野を新会計基準が侵食しているのだが、それは国際会計基準が大きな影響を与えていることは論を待たない。
 この本では国際会計基準についてその報告書を事細かに分析しているが、内容的にはかなりの部分が、新会計基準として日本の企業会計に取り込まれているのがわかる。
 約200ページの薄い本ではあるが、価格が3,700円というのは驚くにはあたらない。著者の苦労がしのばれる力作である。
8号 期間純損益
10号 後発事象
23号 借入費用
24号 関係当事者の開示
19号 従業員給付
26号 退職給付制度の会計と報告
29号 超インフレ経済下の財務報告
33号 1株あたり利益
 このうちのほとんどが現在企業会計基準委員会から報告書が出されており
いずれ借入費用や後発事象などについてもさらに緻密な会計処理や表示原則が定められるものと思う。しかしこうした会計処理については数理計算が過去の加減乗除よりも複雑になる。統計学の知識も持っておいたほうがいいが、経理部員にそれを強制するのは酷というものだ。おそらくはアクチュアリーなど外部の専門団体にアウトソーシングすることになるのだろうが、一般の会計学習者と統計学を含めた数理的会計学の履修者とでは年棒に大きく差がつく時代になるのかもしれない。そもそもパソコンが発達すれば、事務員の数は当然必要なくなる。財務会計のパラダイム変換は労働市場にも大きな影響を与えそうだ。

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