2007年12月24日月曜日

経済学をめぐる巨匠たち

著者名;小室直樹  発行年(西暦);2004 出版社;ダイヤモンド社
近代経済学・近代経営学・社会学の隣接科学の境界線は実ははっきりしない。高田保馬氏も社会学の学者としては職がなく経済学の講師をして業績をあげていたこともある。また経済学の理論で説明できない事象を社会学の理論を援用してそれなりの実績をあげる方法もあるようだ。とはいえこの本では一般に「経済学」として分類される学者の理論を中心にアダム・スミス、リカード、マルクス、ワルラスといった学者から日本の学者まで、やや通説もしくは私個人とは異なる理解の著述もあるが、わかりやすく解説してくれている。簡単な経済史の参考書籍として立派に利用できる本でもある。マックス・ウェーバーの説明は簡潔にしてわかりやすい。資本主義に必要なものとして○1労働そのものを目的とすること②目的合理的な精神③利子を正当化する精神といった3つのテーマで解きほぐしてくれる。生産力・資金・商業といった古典的な理解だけでは足りないとするマックス・ウェーバーの理論の一部が本当に明瞭だ。この3つの柱から「行動的禁欲」「伝統主義の打破」といった概念に下位分化していくという手法である。目的合理論により労働の水準を高めていく精神こそが重要であるし、そうした精神のもとに複式簿記が発達していった‥という展開である。
 またケインズについても、貯蓄のすべてが投資にまわるだけでなく、取引的需要があり(流動性選好)、貯蓄のすべてが投資されるわけではないので有効需要が不足する‥といった下位分化の理論展開で読み解く。大学生の学部レベルであれば、これに数式をマスターすれば十分優が取れる内容だ。ただし、やはり簡単なミクロ経済学やマクロ経済学の教科書、パーソンズの理論といったあたりを読んでからこの本を読むと、より内容が鮮明に理解できるのではないかと思う。経済学のダイナミズムと社会学の理論基礎との関わりも知的好奇心を刺激してくれる。実務に関係しているとまたいろいろな形での応用が考えられそうだ。

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