2007年12月27日木曜日

現場から見た教育改革

著者名;永山彦三郎 発行年(西暦);2002  出版社;筑摩書店
 著者が熱意ある小学校教員であることは認めよう。宇都宮近郊というのはこの本によれば「10代の人口妊娠中絶や覚せい剤での補導者もワーストに近い」地域であるともいう。全国的に強引に画一に塗られた都市化の波とゆとり教育の波の中でそれでも教育論を展開する熱意は感嘆に値する。観光産業もさびれ、工業団地も海外に移転した。高度経済成長期には高速道路も走り、サツキ栽培も盛んだったころもあるようだ。塩原、那須といった観光地は全国的にも現在でも名高い。しかし現在では西武百貨店も撤退し、東京へ従属する日々もひと段落している中、現在はもう一度経済再興に向かって努力を続けている。しかしその中で果たせる未来像もしくは理想像というものは著者すら明確なものを見出せていない。ある種の「抽象論」というものはある。しかし、実際に宇都宮の町でどれだけの「理想的な社会人像」を示せるのかはついにこの本では具体的に提示できないままである。高校の単位制度や塾の公的機関としての認定などいろいろ提言はもちろんあるのだが、それは実現不可能に近い(教育は日本ではもっとも規制緩和が遅れている分野だ)。おそらく理想像としては次の二点にあるのではないかと思う。
①教職員には明らかに適性がない人間でも終身雇用制度だ。これはおかしい。出入りの業者にたかるばかりの能無し教員というのも確実に存在する。現在審議中の教員免許更新性は絶対に導入すべきだ。公務員のリストラにも有用だろう。
②少なくとも現在の「ゆとり教育」を早くやめる。理想像が漠然としているだけでなく、内部的に自発的に勉強する人間など明らかに少数派だから。
 すでに崩壊しつつある公的教育をそれでも擁護するのは著者の立場ゆえだろう。しかし社会でそんな擁護論は誰もまともに聞いていない。少なくとも数学力や英語力が明らかに低下しているのは、学生に少しでも接した人間にはすぐわかってしまう。公式発表でごまかそうとする姿勢を早くあらためないとまずいと思うのだが‥。といってももちろんこうした教育者が地方で頑張っていることはとにかくたのもしい。この本はいまひとつなので捨てることにするが、これからも現場の教育を大事にしてほしいものだ。

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