2007年12月24日月曜日

伝記に学ぶ人間学

著者名;小島直記  発行年(西暦);1988 出版社;竹井出版
特異な伝記作家小島直記の人間学と称する本である。巷の保守派の論調と異なり是々非々で歴史人物をさいていく。人間の強さをちゃんばら映画から読み解き、人間の強さは構え(肩書き)ではなく間合いにあると喝破する。剣術の達人は間合いの重要性を説く。間合いを維持しながら皮をきらせて肉を切れということになる。相手を斬るにはまず自分が斬られなければならない。肩書きで人をひきつけてモノを売ることはできない。肩書きとは別のところで売る努力が必要となる。何かを捨てなければ相手は切れず、斬ることは斬られることである‥。一種の禅問答のようだけれども昨今のゲーム理論からすれば、けっして非科学的な言説ではない。完全勝利などありえず、自分も何かを犠牲にしなければ競争相手には勝てない。そしてまた相手を攻めるのであれば何かを犠牲にする。つまりは自分が斬られなければならないうことだ。
 こうした儒学風の読み物は最近はやらないが、歴史の風説に埋もれた人物を拾い上げる努力は必要であろう。成功した人間の奥さんや部下に言及されていない自伝や他伝がいかにインチキかということを実証した本でもある。

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