2007年12月24日月曜日

ギリシア神話、神々と人間たち

著者名;さかもと未明 発行年(西暦);2001 出版社;講談社
 ギリシア神話自体はもともとかなり人間くさい話ではあるが、この本で紹介されている神々はかなり残虐性をも帯びている。とはいえギリシアという古代文明を支えた地域にさまざまな民族宗教が混和してこの形になったのかと思うと、神話の類型の中に心理学が入り込むのはある意味当然かもしれない。ヘルメス(商売と通信の神)、アテナ(知恵の神)、ヘイラ(ゼウスの妻)、ポセイドン(海の神)、エロス(愛の神)、アポロン(太陽の神)、ヂュオニソス(葡萄と酒の神)、アルテミス(月の神)‥といったところが主な主人公となる。
 もともと紀元前2000年ごろアカイア人がギリシアに登場し、オリエント系統の先住民族を征服していくプロセスでこれだけの神々の物語ができあがったとされている。ゼウスがアカイア人のインド・ヨーロッパ的思考で動いており、その妻ヘイラはオリエントもしくは地中海的思考で動いているのでこの夫婦である神はよく喧嘩をする。トロイア戦争があった時期のミケイア文明の頃にはポセイドンが主人公だったもののその後アカイア人の特徴をもつゼウスが主人公に躍り出ていく。こうしたギリシア神話の多くは線文字Aもしくは線文字Bといわれる言語で記録されていたようだがまだこれらの文字は解読されていない。したがって現代のわれわれが読むことが出来るギリシア神話はホメロスやヘシオドスが口頭伝承を記録したものということになる。ちなみにギリシア文字が誕生したのは紀元前8世紀ごろ。
 またギリシア神話にでてくるプシュケーは心理学(サイコロジー)の語源となっている。エロスとの顔を隠した恋愛が艱難辛苦の末に夫婦となるプシュケー。ただし何の葛藤も苦しみもなくプシュケーは幸せになるという‥。このプシュケーは「魂」そしてティモスは情動を意味する。この身体感覚や現実感覚のないプシュケーが魂でそれがエロス(愛)と夫婦となり、喜びをうむというのはなにやらそれこそ哲学的だ。なおプシュケーが飲んだネクタルという神々の飲み物はおそらく現代のネクターにつながるものなのだろう‥。ギリシア神話は非常に奥が深い。

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