2007年12月24日月曜日

交換教授(上)(下)

著者名;デビッド・ロッジ   発行年(西暦);1984 出版社;白水社
デビッド・ロッジという作家にはもうひとつ「素敵な仕事」(大和書房)という名作あがあるらしいが、いずれも「交換」がメインのテーマとなっている。この本はおそらく純粋なエンターテイメントで、イギリスの片田舎の大学のうだつがあがらない講師とアメリカの名門大学の教授がそれぞれ交換教授として半年間授業や生活を交換し、その後、なんやかんやあって奥さんまで交換してしまう。そして最後には4人の夫婦は、共同生活を送り始める。交換というのは文化人類学のテーマではあるが、ロッジはストーリーを通して1969年当時のウーマンリブも含めて世相や文学理論、大学の制度といったものを批判する方式である。すべての制度から自由に解放されようという文学理論の現実には適用不可能な状態を小説でしめしている。発行されたのが1984年なのでおそらくニューアカデミズムが大学生の間で盛んな時期。多分相当売れたんだろうなあ。原作を書いたロッジは1935年イギリス生まれ。ロンドン大学で英文学を学習下あと、バーミンガム大学へ教師として。ホーソンデン賞を受賞。1970年代を代表する小説とされている。作者は「コミックを通して不条理を描きたかった」などと能天気なコメントをよせてはいるが、おそらく本心ではあるまい。エンターテイメントとして、また1970年代当時のフェミや文芸理論のテキストとして、ぜひともおすすめしたい上巻・下巻の2冊構成である。

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