2007年12月23日日曜日

「資本」の会計  

著者名;弥永真生 発行年(西暦);2004 出版社;中央経済社
 ある程度会計と商法の基礎が固まると非常に面白く読める本である。資本という概念については会計学と商法とではイメージが異なるという点について自己株式や利益処分なども含めて諸外国の会計基準や法令なども詳細に連ねて著述されている。商法は資本を一種の入れ物として認識しており、資本取引によってその入れ物の大きさ自体が増減する。企業会計は逆に利益剰余金などが損益取引によって増減するというイメージで構築されているとする。
 いわば会計学では資本というのは入れ物の中に入っている水のようなものということになる。商法では資本という制度は配当可能利益算定のために存在するものであるから、すべてがこの利益配当という枠組みから構築されてくると考えられる。そうすると現行の資本準備金・利益準備金といった区分はあまり意味をもたないし、区分の意味がなければ区分表示も意味がない‥ということになる。
 かなりドラマチックな資本会計の分析であるがこれで企業会計の抱える問題点がかなり明らかにされている。読み応えがある一方で興味がない人間にはかなり厳しい本かもしれないが、少なくとも商法が関わる分野においてなんらかの仕事をする場合には必読の本といえそうだ。

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