2007年10月7日日曜日

天皇と東大(下)

著者名 ;立花隆 発行年(西暦);2005 出版社;文藝春秋
 上巻と同様に約800ページの大作。上巻では3・15事件や血盟団事件のころまでが著述されていたが、下巻ではさらに佳境に入って、滝川事件、美濃部達吉の天皇機関説問題、統帥権干犯問題、ゾルゲ事件、満州事変、2・26事件、神宮H氏と人間魚雷「回天」、矢内原忠雄追放劇、東京帝国大学経済学部三国志など「大日本帝国」から「日本」へ至る歴史が「東京帝国大学」を舞台に描写される。この下巻は1945年8月15日で終結するのだが、学問というもの、大学というもの、学者というものを豊富な文書とデータをもとに著述される。歴史に対して、これほどまでのアプローチができるとは実はこの本を読むまで思っていなかった。時代の雰囲気こそがまさに「軍国主義調」の時代だったからこそ園中でオリジナリティを貫きとおした学者ももちろんいたわけだが、経済学部の歴史がその後マルクス経済学に特化して近代経済学には遅れをとった理由も下巻では明らかにされる。
 巻末の参考文献一覧は今後の日本史の中でもおそらくかなりの重要書籍リストとして機能するのではないかと思うほどの充実ぶり。707ページから740ページまでに展開されている資料はすごい。さらに索引もまた担当編集者の意地がかいまみせるほどの充実度で、トータル34ページの索引は上巻と下巻をさらに項目別に検索可能にしてくれる優れもの。天才ジャーナリスト立花隆氏の渾身の傑作歴史ルポタージュであると思う。

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