2007年10月28日日曜日

女子大生会計士の事件簿

著者名 ;山田真哉 発行年(西暦);2002 出版社;英治出版
 女子大生会計士と29歳の青年会計士のコンビが繰り広げる監査事件簿。自己株式の取得や商法の規定などはもうだいぶ変化しているのだが、それでも粉飾決算の「手口」は2002年当時と現在とで大きく変化しているところはなさそうだ。「ストラクチャード・ファイナンス」とよばれる手法を用いた監査ファイル5は、特別目的会社を通じて銀行から融資を受けるとともに、本体の決算では借入金が実際よりもかなり少なく計上するという手法だった。この特別目的会社を投資事業組合とすると、現在証券取引法違反容疑で取り調べ・刑事告発を受けているL社とほぼ同様の手口となる。上場廃止になったL社では商品の品質の良さで知られる会計ソフトなどを軸にして経営を立て直すようだが、正直厳しい。しばらくは、短期売買の繰り返しなどで、多少の株の売買はあるかもしれないが、これからさらに粉飾決算がでてくるようだと、グループ解体どころではすまないかもしれない。株主の損害賠償訴訟なども予想されるので、実際には債務超過と推測してもおかしくはない(偶発債務としての損賠倍賞なので実際には「負債」にはならない。ただそれが現実化していくと事実上の債務超過となる)。
 エンロン事件で用いられたペーパーカンパニーの名前が「ジュダイ」や「チューコ」など「スター・ウォーズ」からとられた名前が多かった…など会計にまつわる種々の知識が豊富に取り込まれている。価格がやや高い(本体価格950円)ではあるが、こういう本から会計の世界に入るのも悪くはないし、公認会計士という実務の世界出身だけあって会計学の話にもリアリティが相当ある。ただし小説という設定なのでしょうがないのかもしれないが、現役女子大生で公認会計士ですでに主査もつとめていて、合同コンパなどもやって…というのはやや…辛い…。ただまあ、そういう設定がまた受けるような土壌がどこかにあるのかもしれないが…。

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