2007年10月27日土曜日

巨人軍論

著者名 ;野村克也  発行年(西暦);2006  出版社;角川書店
 累計15万冊を超えたとかともいわれる巨人軍論だが、内容的には現代の組織論とかリーダーシップ論に近い。いわば経営管理やサラリーマン術などにも容易に移植可能なスキルや考え方が紹介されており、さして野球が好きでない人間にもわかりやすく組織の形態論が紹介されているのが売れた理由ではなかろうか。原理・原則を大事にしつつ、一種の人格修養をも組織の発展には必要とするあたりですでに他の監督経験者とは異なる重厚さがある。有形の力よりも無形の力を信じる野村克也氏の持論は4番バッターを取り揃えることではなく組織にとって重要なのは「機能性」だと喝破し、組織の機能性に必要なものは何か、といった視点からチーム作りを始める。観察、分析、判断、決断といった力が重視されるのだがもちろんデータという第三者に説明可能なスキルの活用も主張されている。また「中心なき組織は機能しない」という原理から4番打者やエースの重要性もとかれる。会社でいえばエース社員といわれる存在だろうか。数字だけでは説明できない一種の人間性を兼ね備えた存在のことである。「ツボ」「コツ」「注意点」という3つの視点で野球を解読する手法も実は仕事に非常に通じるものがある。仕事にはやはり「ツボ」と「コツ」そして「注意点」などいくつかのチェックポイントがあり、それをないがしろにして仕事が先に進むことはないように思う。日々の積み重ねと相手の弱点をつくという野球のセオリーは企業の間の戦略競争などを思わせるふしもあり、何度読んでもこの「野村節」には個人的にはうならされることが多い。

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