2007年10月27日土曜日

ベルサイユのばら①~⑤

著者名 ;池田理代子 発行年(西暦);1994 出版社;集英社文庫
 フランス革命を舞台にした長編歴史漫画の名作中の名作。ルイ14世から始まる頽廃したベルサイユ宮殿に男装の麗人として近衛兵隊長を勤めるオスカル。オーストリアから政略結婚の道具として送り込まれてきたマリー・アントワネット。その夫ルイ16世。そしてスウェーデン貴族フェルゼン。ポリニャック夫人の巧みな権力へのすりより、首飾り事件など宮殿の頽廃をたくみにおりまぜ、虚実をとりまぜた歴史物語は1879年7月14日にむけて突き進む。男装の麗人といういわばありえない存在が自由に不自由な時代を突き進む。型破りな貴族という設定は、民衆が自由と平等を訴えてたちあがったときに、予想されるべき行動をとるわけだが…。「制約」「抑圧」から常に自由と解放にむけてつきすすむ「ぶっとんだ存在」は、1970年代から現在に至るまで根強い人気を誇る。読み進めていくうちに、単なる恋愛物語ではすまない「抑圧」との戦いがすけてみえる。フランス革命以後の物語はほろにがい。フェルゼン自身が非情な権力者として暗殺されるくだりまでおそらく池田理代子は「書き続ける必要性」があると感じて筆を進めたのだと思われる。単なる人権革命、不平等革命という点だけをとらえずに、「その後」の歴史の皮肉さまでも描くその容赦のないストーリー。そしてそれを書いたのは当時24歳の池田理代子という天才。昭和の時代の凄さを思う。
 シュテファン・ツバイクの「マリー・アントワネット」は、以下のような前文からマリー・アントワネットを「平凡な一主婦」として位置づけるものの歴史の流れの中でこの平凡な人間が「不幸のうちに初めて人は、自分が何者であるかを本当に知るものです」という発言をする一種の突然変異のようなヒロインとして描く。「ベルサイユのばら」でもけっして並外れた才能を示すわけでもないマリー・アントワネットが急に輝きだすのは、断頭台を前にしての毅然とした女王としてのプライドがうづく瞬間からかもしれない。だとするとオスカルはやはりフランス革命の発生時点でやはり死ぬ運命にあった。ヒロインは一つの作品に一人で十分だったであろうから。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

こんばんは

「ベルばら」 は中学生のワタクシが漫画と歴史に目覚めた原点でした。

オーストリアの皇女として偉大な母マリア・テレジアに育てられながらも、甘やかされ何もわからぬままフランス王妃となってしまった幼い王女、時代の流れとあいまって悲劇はもうそこから始まっていましたね。

ごとりんさんが書かれているようにやはり架空の麗人オスカルは、当時の抑圧された時代の中で、高らかに自由と平等を謳い上げた庶民の象徴なのでしょう。貴族として生まれながら、革命の中に身を投じてゆく姿は作者の単なる創造の人物ではなく、確かモデルになった人がいたと聞いたことがあります。

池田先生が、「ベルばら」 を書かれたのは24歳の時でしたか!! 「ベルばら」 そして少女漫画としては最後の作品となった 「オルフェウスの窓」 その後の劇画の傑作の数々、確かに天才と呼ぶのにふさわしい人ですね。

gie さんのコメント...

ルシアンさん こんにちは。第4巻あたりでオスカルは漫画の流れが消えていきますね。それが非常に残念でしたが、池田先生はフランス革命が終わった後の教科書などにはあまりでてこないフランス革命政府の「粛清」「人民法廷」までどうしても書きたかったのだと思います。今となっては、オスカルが死んだ後もこうしてフランス革命は動いた…ということを知っておくためにも、必要な第5巻だったのだなあと思います。マリー・アントワネットの描写もうまかったですね。

 人間の本質は変らないのに社会が先に急激に変動してしまう…。そんな中で純愛を貫けるかどうか…といった人間の最低限のモラルみたいなものも問うている作品かもしれません。24歳なんですよね…。やはり池田先生は天才ですね…。