2007年10月28日日曜日

ひたむきに生きる

著者名 ;澤地久枝 発行年(西暦);1986 出版社;講談社
「不慮の事故など経験しないほうがいいに決まっている。しかし人生とは一歩先に闇の待つ生活でもあり、挫折をいかに生きるかが、その人の人間的価値を決める。身体障害者は社会的には弱者であろう。弱者となってなお不屈であろうとする人にわたしは心をひかれる」という人間の弱さや痛みといったものに深い理解を示しつつ、さらにそれを乗り越えようとする精神的強さに魅力を感じる筆者は人生についても「ひたむきさ」を重視する。すべての困難とひたむきに取り組んできた彼女は「ここまで生きてくるとすべての点で私は幸運な人間だったことになる。マイナスと思われたものはいつの間にかプラスの要因に変わっていた」とまでかけるような境地にはいるわけだ。これもまたマイナス部分をひたむきにプラスに転じようと努力してきた筆者の努力の現われなのだろう。いろいろな小説の話や「人間の条件」の作成助手として注記を担当する話など非常に興味深い点は多いのだが、私なりに要約していくと「なにかしらの目的意識をもって取り組むこと」がすべて最終的な結果に結びついた一つの例ということになるのだと思う。目的意識もなしにただ忙しいだけでは時間に流されているのと変わりはなく、ひたむきに生きる、ということはいろいろ考えながら生きる、という意味と同じなのだろう。

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