2007年10月27日土曜日

野村ノート

著者名;野村克也 発行年(西暦);2005 出版社;小学館
 情報を重視しつつも人間の機微にも通じた指導者…というのは世の中にそうはいないが、この野村克也氏については毀誉褒貶はあるかもしれないが、やはり野球史に確実に名を刻む人だろう。現役の選手としての活躍はもちろんだが、それにくわえて指導者としての原理・原則についてここまで深く考えている人というのは世の中にそういるものではない。「ファンが何を要求し、何に感動するのか考えてもらいたい」とファン重視のポリシーを打ち出しつつ、「プロというものは本来知力で勝負するもの」ときっぱり断言し、祖の一方で選手の「やる気」についてもしっかり目を配っている。また人間学と証する一種の品性や知性についても重視しており、こうした原理・原則がしっかり紙に印刷されて配賦されるとなるとその下で働くコーチや選手にも明確な目標原理として機能する。場当たり的な気分で選手を采配するのではなく、明確な原理のもとに采配するというプロ意識がかいまみえる。この本は15万冊を超えるベストセラーになったようだが、おそらく野球で使えるこの原理・原則がそのままビジネスにも応用可能な部分が多々あるためだと思われる。「思考が人生を決定する」という野村克也氏のセリフはもちろん知性や情報の活用を含む概念だが、それよりも幅広い品性や人間としての礼儀といったものまでを含む高度な概念を指している様だ。ベストセラーになる理由もうなずける充実の野球評論あるいはビジネス倫理の書籍である。

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