2007年10月15日月曜日

長期停滞

著者名;金子勝  発行年(西暦);2002 出版社;筑摩書房
 2002年当時の構造改革や市場原理主義導入に反対していた経済学者の本。現在ではデフレ傾向は一応脱したとされてはいるが、貯蓄過剰、マネーサプライ過剰といった論点はまだ残っており、これからはインフレ懸念と戦うのが中央銀行の仕事となる。インフレターゲット論はもはや陰をひそめたようだし、こうした長期停滞を心配する声もかなり小さくはなった。不良債権という問題がかたづきつつあり、不動産価格がおそらく上昇していることも無関係ではないだろう。ただ、構造改革路線がさらに進むとなると市場原理がさらに透徹されていくわけで、まだ国全体の消費や投資がどの水準に落ち着くのかは決定されたわけではない。「あたる」「あたらない」ではなく、どうしてそうなったのか、どうしてそういう予測がなされたのかといった理由に着目すべきだろう。
 新書ではあるがマクロ経済の基本的なテキスト程度の知識は必要な本でけっして読みやすいというわけではない。また国際会計基準についても筆者は批判しているが、ある程度批判の対象となっている国際会計基準について理解してからでないと、「国際会計基準を知らない」が、「いけないこと」という妙な「偏見」が植え付けられる可能性も。やや独断に走りすぎた感がないでもないが、それでも独特の着眼点と論理構成は呼んでいて面白い。

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