2007年10月27日土曜日

社会学講義Ⅱ

著者名;橋爪大三郎 発行年(西暦);1997  出版社;夏目書房
 社会学講義の「Ⅰ」というのもあるのだが、この「Ⅱ」のほうがページ数が厚く、最初はとっつきにくい印象を受ける。が、実際には内容的になるべく現実の日常生活に近い内容を紹介しようということで「Ⅱ」のほうが理解しやすい。タイトルは社会学となっているが内容的には「社会についての学問」という趣旨で、特に社会学にこだわるものではなく歴史学、経済学、政治学といった社会科学総体の観点で「現在」の問題を取り扱うという流れになっている。社会科学入門の書籍ラインナップもあり、これまで社会科学に疎遠だった人にも敷居を軽くするような配慮が見受けられる。特に歴史的に日本社会を考察したくだりは、非常にわかりやすく、時代がどういう方向に向かっているのか自分自身でもある程度の方針が決めれるようになるのが、この本を読んでの大きな収穫といえるかもしれない。どうしてもポストモダンだ、消費生活の記号論だ…といった抽象的な議論にとてつもなく入り込んでいく学問といった印象をうけていたのだが「モダニズムも非常に大きな存在」と現実をふまえた趣旨で社会全体をとらえようとしているので、特段にポストモダンについて理解がなくても内容に入り込みやすいというのがメリット。言語学でチュオムスキーを読むというのはしんどいが、文化人類学の「野生の思考」や「タテ社会の人間関係」などはわりと読みやすいブックガイドだし、哲学についてもミッシェル・フーコーに的をしぼったブックガイドに好感がもてる。「監獄の歴史」などは教育学などでも最近よく引用されているのでわからないなりに手許においておいても損はない名著だと確かに思う。
 国際関係や大学制度などを題材にした入門書なのだが、いろいろな状況の中でそれでも最善の選択をすることが危機管理の定義である、など近代経済学の理論などをところどころに用いながらきわめて明瞭に説明をしてくれるあたりが本当にありがたい。もちろん専門家になるのであれば、こうした「既知」の説明ではなく、新たな地平線をみつける必要性があるので相当に大変な作業になるが、社会科学を現実の日常生活に活用しようという視点は大学や研究が日常から「遊離」しないためにも必要なことではないかと思われる。

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