著者名;堀忠雄 発行年(西暦);2000 出版社;岩波書店
格調高く睡眠の定義が冒頭でなされている。「睡眠とは人間や動物の内部的な必要から発生する意識水準の一時的な低下現象」とされるが、これを統計学的に分析したのがこの本。枕の高さをどうするか、といったようなことはあまりかかれて居ないのだが、眠気が催す交通事故の統計学的証拠や眠気のリズムなどについて章がさかれている。
個人的には第6章の「昼寝」の効用について説かれている部分が興味深かった。人間の本能というか身体にはもともと昼寝をするようにインプットされる部分があることが暗に示されている。だいたい午後2時から午後4時にかけてはその前日に16時間睡眠をとっていても眠気を覚える時間帯らしい。昼寝の長さは科学的には20分が適当とのことだが、これを地球の緯度でみると南北45度の範囲内の国では昼寝が習慣として定着し、それよりも緯度が高くなると昼寝がタブー視される傾向があるという。英国ではちょうどお茶の時間がこの午後2時ごろに相当するが著者はそれを文化の多元性ということで解釈している。確かに同じ眠気を感じるのであってもそのまま昼寝するのかお茶の時間にするのかはまた文化とか国民性による部分も多いのだろう。昼寝によって「うっかりミス」が防止できる効果なども指摘されており非常に興味深い新書である。人生の3分の1は睡眠時間なのでもし科学的に効率的あるいは快適に睡眠時間をすごすノウハウがあるのであればそれをどんどん取り込んでいくのは悪くないことだと思う。
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