2007年10月8日月曜日

文学部唯野教授

著者名 ;筒井康隆 発行年(西暦);1990 出版社;岩波書店
 やっぱり面白い。物語の伏線になっているエピソードはいずれもあの大学のあれ、この大学のこれといったいろいろ類推が利くものなのだが、あれからもう10年以上たってみると肝心の文学部そのものが解体しはじめている。現在の大学のほとんどでは文学部ではなく人間総合科学部やらなんやらと名称を変更しており、地道な英文学や国文学などの基礎研究をしている大学はかなり少数になってきたといえる。テリー・イーグルトンの「文学とは何か」を基礎とした印象批評・新批評(ニュークリティシズム)・ロシアフォルマリズム・現象学・解釈学・受容理論・記号論・構造主義・ポスト構造主義といった文学批評の基礎的な分野がすべて網羅されているのがまた楽しい。結局この本がかなり当時売れていたのはまだ文学というものに対して世間がある種の「夢」をみていたからかもしれない。

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