2007年10月4日木曜日

歴史の中で語られてこなかったこと

著者名 ;網野義彦・宮田登 発行年(西暦);2001 出版社;洋泉社
 新書サイズであの網野義彦先生と宮田登先生の対談が読める幸せ。しかも洋泉社さんは歴史の専門出版社ではないはずなのに、「歴史」にこだわる新書が結構出ているという幸せ。映画「もののけ姫」を題材に語られる第1章で「たたら」など製鉄と「農業」と「養蚕」などの関係性について概論。さらに農業中心史観がもたらした「女性の役割」についての両先生の考察。そして織物の歴史、老人の歴史と現在の「談合」、地図から分析する「日本」という「国家」の2つの路線、そして話は「自由主義史観」についての「考察」へと現代的なテーマに移り、読者の「固定観念」をたくみにゆさぶる。そしてそのスタンスはやはり学問的な土台と両先生のアイデアのせめぎあう、とてつもなく豊かな歴史学への「入り口」を開いてくれる。

 単行本で発行されたものが新書サイズで再刊されたもので、このとき宮田先生はすでにお亡くなりになっており、そして先日お亡くなりになられた網野先生が「あとがき」を書いていらっしゃる。お具合がすでに相当悪かった様子が「あとがき」からうかがわれ、そして同時にそれでも歴史学についての「こだわり」「熱情」が感じ取られ、本を読んでいると非常に一語一語にこめられた熱い想いにうたれる。今このとき、この時代だからこそ網野先生の本はさらに拝読していきたいと思う。

0 件のコメント: