2007年10月11日木曜日

黒い経済人   カテゴリー 経済学        

著者名 ;有森隆 発行年(西暦);2003 出版社;講談社
 フリーのジャーナリストがよくぞここまで取材して、しかも発表できたものだという感慨を覚える。かなりリスキーなお仕事ではなかっただろうか。特定の何某巨大組織と「闇金融」のつながりでは年間数千億円の収益(貸付金額のことではないかと推定される)をあげたその実態に迫る。多重債務者をめぐる名簿データのやりとりや、顧客情報を管理するソフトシステムなどについても紹介。裏社会に表社会のフランチャイズシステムを持ち込んだ冷徹な経営者の様相を取材。さらにK-1関係の事件やゼネコンがらみの裏金融とのつながり。青木建設が倒産した当時の状況などがレポートされる。
 そして個人的に一番圧巻だったのは、あおぞら銀行の初代社長の自殺をめぐるレポートだ。自殺をされたのは日本銀行出身の「元エリート」。三社共同所有となった当時の状況がいくつかの仮説をまじえて語られるのだが、こうした「仮説」を土台にしているとはいえ身近な当事者から取材を綿密に重ねて言った様子がうかがえる。金融債背委員会のレポートなども著述されているが、今から見ても信じられないような経営状況にあったようだし、ストレスもかなりのものだったのだろう。さらに他のシステム金融や紀州をめぐる金融事件などとオーバーラップさせて読者には、うすうす真相とはいえないまでも、ある程度の「推察」ができるように書籍では編集されているように思える。
 ラストにはエンロン事件などアメリカの状況を含めて一冊の本にまとめあげ、2006年現在の時点で今後を予測する意味でも貴重な資料となりうる本だと思う。すごいジャーナリストではないだろうか。

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