2007年10月3日水曜日

下流喰い~消費者金融の実態

著者名 ;須田慎一郎  発行年(西暦);2006 出版社;筑摩書房
 街のいたるところに無人の消費者金融のATMが設置され、注意してみているとやはりそれなりに利用者がいるようだ。利率についてはもともと敏感なほうだったが、世の中にはイメージに惑わされて複利計算と単利の違いなどには無関心なまま気軽に利用できるサービスを利用して、その結果元本が減らないまま利息ばかり払い続けている人も大勢いるのだろう。グレーゾーンとよばれる利息制限法と出資法の「境目」についても今後撤廃されていく方向だが、かなりの犠牲者を出した末の制度改変だ。
 この書籍では多重債務者の数をおよそ356万人と見積もり、消費者金融から免許を受けていないいわゆる「ヤミ金融」に流れていくプロセスを紹介。ア○フルの中間決算報告会(2004年)で代表取締役が「銀行を買収したい」といった発言を紹介。その債権取立ての方法や苛酷なノルマなどが紹介される。2006年の連結経常利益が約757億円というから相当な収益をあげていたことがわかる。また不動産担保ローンのシステムなども紹介されるが、その状態をみていた金融庁が2005年ごろから動き出す様子も紹介されている。
 さらに新宿付近のレディースローンや「おんな市」といった裏の世界の情報までカバー。陰惨な実話が並ぶが、経済新聞などではまず紹介されない話が満載(ちなみにこの売買の相場は借金総額+50万円とのこと)。消費者金融の利用者の71・8パーセントが男性で40歳未満が67パーセントと若年男性が主役のこの業界も2008年度は新たな局面をむかえそうだ。そしておそらく著者が懸念しているような中小規模の金融業者の「ヤミ金融化」現象もかなりの確率で的を射ていると思った。セイフティ機能が未解決のままの「市場主義」が持ち込まれたことへの著者の怒りが伝わるノンフィクションの名作だと思う。

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