2007年11月16日金曜日

人生賛歌

著者名;美輪明宏・斉藤孝 発行年(西暦);2004 出版社;大和書房
ある種アナログの天才ともいうべき二人の対談である。斉藤孝にとっては自著の「質問力」「対話力」を実践していることになるが、そうした気負いは感じられない。
 妙な話でこうした対談で行われている内容はかつて学校教育で取り扱っていたことのようにも思う。文化の継承ということに関していえば、日教組の教員の方がある意味しっかりしていた面も実はあった。カウンターパンチとしての社会民主主義は結局のところ、21世紀にには「プチ右翼」(西部進)を世の中に蔓延させることにもなったという皮肉な結果ではある。日本人の文化や伝統の継承を破壊したのは軍国主義であり、続く戦後民主主義であると美輪が糾弾する。軍国主義から戦後民主主義、そしてポストモダンから現在の無思想状況へと連なる系譜が一刀両断だ。
 営利主義についても厳しく指弾されているが、それについてはよくわからない。ただし学校が文化を継承する場所であるとするならば、単純にプチ右翼的な言動をとるだけでは、あまり意味がなかろう。それにかつての「左翼」といわれた人々はもう組織すら幻想に近いものがある‥。
 自分を肯定しつつ、さらに自分を客観的に見て、さらに文化の流れの中で100年先をみて生きる。けして楽な道ではなく、そしてまた「保身」に走りがちなわれとわが身の「醜さ」をこの本を読みながら自覚する。
 一種の「張り」がここにはあり、ここで発言した内容に二人とも拘束されるのを承知のうえで、出版しているのだからそれだけでもたいしたものだ。
 「美意識」というもの、そして多様なジャンルについての好奇心というものを、じっくり考えていくこと、。そしてまたビジネスという単純な言葉の裏に文化の継承があるということをしみじみ自覚する。いい対談本である。
 「ビジネスとは相手の隠れた需要を突っついて、それを表に出させるものだとおもうのですが、その相手がどんな需要をもっているか、どこを突っついてもらいたいのかを感じる感性が現在の日本男性には足りないんです」
 「経験の世界や暗黙知の世界が大きくないと発想のネタが生まれてこない」
「日本画の絵の具は、岩絵の具で自然の石を粉にしてひいて粒子にしてそれを膠においてとかすんです。膠と水の加減、絵の具によって違うんですが、膠を土鍋を使って炭火で暖めながら小皿に移してお湯をたしていく。紅でもいろいろな紅がありますが、それを指先で加減しながら、好きな色になるまで膠と混ぜていくんです。そうやって自分の色を作っていくんです」

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