2007年11月24日土曜日

私日記・荒木経惟写真全集8

著者名;荒木経惟 発行年(西暦);1996 出版社;平凡社
 1980年という時代を中心に映画「チゴイネルワイゼン」のスチール、その後自殺した女性や中上健次、坂本龍一、山田詠美、タモリといった1980年当時の有名人、さらにタケノコ族や雪の神楽坂などさりげない写真がさりげなく配置されており、入院した東京厚生年金病院でも写真をとるというすさまじさ、「過激」という言葉は何を指すのかはともかく、被写体がどうこうではなく1980年という時代がそのままえぐりとられて1冊の写真集に集められ、そしてそれを2005年の今みて「衝撃」を受けるというあたりにこの天才写真家の天才たりうる側面があるのか。時間の感覚がまるでずれたようなタイムマシンのような経験を写真から受ける。
 いまやネットでいくらでも「過激」な写真は入手できるわけだが、そうしたある意味では安易で手軽な「過激さ」ではなく時代というものをえぐりとるような写真集というのはそれほど世の中にはないと思う。デジタルカメラの安易さは写真の質の低下をうんだが、でもおそらくは、ツールではなくやはり撮影する人間の美学こそが写真集の真髄なのだという確信がもてる。時間と空間のネジレを経験できる写真集としてお勧め。

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