2007年11月18日日曜日

ブラック・ダリア

著者名;ジェイムズ・エルロイ 発行年(西暦);1994 出版社;文藝春秋
 ブラック・ダリアというのは実際にハリウッドで発生した猟奇事件。この写真を見たことがあるのだが、まるで笑っているかかのように口が耳元まで裂けていた。この事件は結局未解決となったが、実際のこの事件をもとにジェイムズ・エルロイがミステリーを構築。とはいえ、「暗黒シリーズ」と銘打たれているだけあって、非常に内容が暗い。暴力シーンや発砲シーンなどの描写は文字で描写されているのにこれまた救いがない。もし救いがあるとしたら、捜査を担当していた刑事が最後には懲戒免職となり、そして飛行機で目的地に飛び立とうとする瞬間のみだろうか。1947年という第二次世界大戦直後のアメリカでしかもドイツ系統の父親をもち、徴兵を忌避したという主役の素性自体が暗いのだが、戦争に勝利しつつも何かムクワレナイ1940年代の八百長ボクシングや犯罪都市ロスアンゼルスの描写はやはりこの作家独特のものである。殺伐さは既存のハードボイルド小説の領域を超えるが、これはまた好き好きかもしれない。平和を理解するときには時にはこうした小説もまた役に立たないではない…。

0 件のコメント: