2007年11月20日火曜日

ヒヤパカ

著者名;山野一 発行年(西暦);1989 出版社;青林堂
 またまた山野一の作品集だが…。1989年といえば日本経済はバブルのまっさかり。つげ義春とは違う意味で昭和の原点やら貧困といったものに取り組んでいた「異常な作家」の作品集。だいぶ読み返していたのだが、今回を最後に棄てる事にした。人間の深層心理(エス?)にはおそらくはかりしれない残虐さと優しさが混在しているのだと思う。ただその多くは文明生活の中ではぐくまれてきた負の遺産のような気もしないではない。近代精神の究極の世界の中で、時間と論理がまったく相似形では働かず、西欧文明とインド文明が混在した得体の知れない世界の中で、ありふれた人生哲学のほとんどすべてを破壊しつくす。貧乏とか飢餓といったものがなにをもたらすのかをここまでやるかというぐらいにまで追求しつくす。今の生活に贅沢はいえないし、そしてまたいつしかくる飢餓生活を想定してみると、ここまで人間はやれるのだ、それでも生きるのだ…といったキレイゴトではない世界が展開する。ただし。おそらく社会人になって仕事をもてばこうした生活はまんざら嘘でもないし、そうした飢餓生活への「恐怖」からたぶん労働にいそしむケースもあったりする。どうにかなるか、どうにもならないかはまた…人それぞれか…。

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