2007年11月18日日曜日

ハーバードの女たち

著者名;リズ・ローマン・ガレージ 発行年(西暦);1987 出版社;講談社
 ハーバードを卒業した4人の卒業生を中心に構成。インタビュー記事がメインだが、どうにも気がめいる話ばかり。ケーススタディなどの授業を通じて独特のセクションが完成していくプロセスと入学制の10パーセントを占めた女子大生の相互の緊張感などがひしひしと伝わってくる。日本の「グロテスク」よりも、なんだか後味が悪いかもしれない。著者は、単に企業の中だけの話ではなく家庭や生育状況などにも踏み込んでインタビューを展開するとともに、取材が終わった後の交友関係などにも筆をさく。それがまた後味を悪くする。映画「キューティ・ブロンド」でハーバードに入学した「超お金持ち」の女子大生を主人公にしていたが、この小説では溶接工の娘、いったん看護士として働いた後に29歳にしてハーバードを卒業した女子大生など必ずしも選良とは目されないコースをたどった人間の足跡もたどる。「企業社会では、特定の仕事をうまくこなす者よりも、純粋に権力を追求する者が成功する」など実際にウォール・ストリート・ジャーナルの新聞記者として働きつつ、企業と家庭の両方を目標に近づけようとした著者は、文章の中に相手に対する嫌悪感を隠そうともしない。その筆の鋭さは1973年の卒業生をとらえて迫真のルポとなった。そしてそれから20年。おそらく当時の取材対象者は現在50代。80年代と21世紀とでは、微妙にではあるがだいぶ状況は確かに変わってきたところはある。だが、変わらない部分。それは人間の「生活観」みたいなものかもしれない。あまりに泥臭い現状報告が日本に住む自分にも時空を超えて共通するものを見出し、そしてそれがまた自己嫌悪にもつながるという読後感の悪さ。貴重な報告ではあるが心して読まないと…

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