2007年11月24日土曜日

疲労とつきあう

著者名;飯島裕一 発行年(西暦);1996 出版社;岩波新書
 バブル経済と平成大不況の両方の時代を経験してみると、おそらく中規模での経済成長がいかに大事かということがわかる。
 バブル経済はバブルであるがゆえに、限られた労働力を限りなくフル稼働させることでさらに高い経済成長を実現したという側面がある。その結果、豊かな生活が実現されるはずが過労死や業務の重圧にたえかねての自殺者などが生まれるという暗い時代をうんだ。そして平成大不況でも失業や終身雇用の幻想がくずれた社会で自殺率が増加した。この両方の現象からして、人間は急激な環境変化には非常にもろい存在だし、単純なライフスタイルだの生活哲学だのは本当に役に立たないものだとも思う。今は市場経済が叫ばれているがそれだって10年後どういう評価がくだされるかはわからないということは確実にいえるだろう。その中でどうしても「疲労」という現象はどちらにも共通してあると思う。バブル経済であれ平成大不況であれ経済環境の変化にともない、身体的もしくは精神的疲労というのは相当に当時のサラリーマンに蓄積したはずだ。その疲労とどう戦うかということは結構切実な問題ではないかとも思う。
 深い眠りやそして複線型の生活スタイルなどが説かれるが、もちろんこうしたことは常日頃から心がけていないと実現できるものではない。夢とか理想とかいう言葉と現実主義という言葉とはそんなに簡単に両立できるものとは思えないが、おそらく学生時代にいだいていたはずの理想が崩壊するのは現実主義からくる「疲労」によるものが相当に大きいのではないかとも思う。
 人生は短いし、短い中で時間を活用するときには身体的・精神的疲労の蓄積はさけたほうがよい。健康というものへの警鐘をならす新書本で、景気回復の様相がではじめた昨今、過去をふりかえって日常生活でいかに健康を維持するのかは考えておくべきテーマだと思う。

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