2007年11月18日日曜日

日本経済再生の戦略

著者名;野口悠紀雄 発行年(西暦);1999 出版社;中央公論新社
 構造改革と景気対策は異なるものであることを指摘し、将来の超高齢社会では日本のマクロの貯蓄が必然的に減少すること、そしてその対策のために今ある総貯蓄を効果的な投資対象に振り分けていくことなどを解く。構造改革の「構造」とは、野口氏のいう「1940年体制」であり、借地借家法、間接金融、業界団体、物価の行政指導などがある。これらは大分改正され、借地借家法の改正ではすでに定期借地権などの設定も可能となっている。また間接金融の担い手である銀行も大分整理統合され、ライブドアなどのように新株予約権(転換型)を資金調達に効果的に駆使する企業も登場した。そして帝都高速交通営団の民営化もおこなわれ、後は政府系金融機関が整理統合・縮小し、郵政民営化がなされ、国家公務員が本当に削減されればある程度構造改革が出来たと考えていいのかもしれない。しかし、これはあくまで第1ステージであって、その次に効果的な投資対象に貯蓄を振り分けるという作業が残る。後の世代に技術や知識など競争力の源となる資源を残し、リーディングインダストリーを育成すると言うのは並大抵のことではない。それこそ試行錯誤が必要な作業であり、市場の選別が必要だ。さらに人材のクラウンディングアウト現象ともいえる優秀な人材の国家公務員への就職というのもややもったいない。特に理科系学生がもし国家公務員となってしまうと本来民間企業で製品開発をするべき人材が書類の整理とかをする可能性もあるわけで、やっぱり終身雇用制度は維持するとしても、キャリア制度をなくして自由競争の原理を持ち込むとともに、民間部門との人材交流は必要だろう。あ、ただし書類仕事しかできない人間が民間にきても意味ないので、やはり起業家としても通じるノウハウをもった人や研究業績がある理科系等の公務員ということになるのだろうけれど。政府系金融機関についても必要な部分は確かにあるが、それが民間金融機関の商品開発を阻害したり、本来金融機関から企業へ資金供給されるべき資金がわけのわからない第三セクターにまわされるのはかなりまずい。構造改革もおそらくここらあたりが正念場。郵政以外にも独立自営的な組織にしなければならない国家機関はまだ多数存在する。たとえば日本放送協会などは民営化して何の不都合があるだろうか。

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