2007年11月20日火曜日

台湾論

著者名 ;小林よしのり 発行年(西暦);2000 出版社;小学館
 かつて台湾からの留学生と話をしたときに、アジアの中では珍しく、親日的な発言が多くびっくりしたことがある。また、日本語と英語の両方をあやつるとともに社会福祉政策や情報処理についても深い勉強をすすめ、さらに社会学についての論文を作成中だった。こうした高い学力とさらに日本に親しみつつも、日本の研究業績や学問体験を勉強するとともに、さらに台湾にそうした研究成果を持ち帰り明日の国の発展にいかそうとしている姿勢は脅威でもあった。もちろん尊敬の対象でもある。中華人民共和国との複雑な歴史、本省人と蒋介石からの外省人との対立、そして民主化という流れの中で、独特の国家意識を構築してきたのだろうが、小林よしのり氏はこの本の中で国家意識とは血の問題ではなく精神の問題だとしている。イスラエルなどの国をみても確かにそうだが、どうしてこうしたことが本になるかというと、おそらく台湾についての理解が不足していると著者は思ったのかもしれない。だがそれはあくまで台湾民国のありかたであって、日本とはまた異なる。同じアジアの島国ではあるが、日本が台湾から学ぶべき点とそうでない点というのは確かに存在するように思う。安易なナショナリズムや過去への礼賛は、多分、生産的ではないし、単純な議論ほど一色にそまる特質がわれわれにあることは注意しておくべきなのだろう。複雑怪奇な文化の集積地点で、アニメ産業が世界で評価されるこの国のありかたはもっとソフトウェアに特化した、マイルドな集合体なのかもしれない。なるべく多くの人種やイデオロギーを包摂できる集合体というのが最終的には一番強い集合体でもある。それをシンプルにまとめあげようとしたときに、多分、染まることが最優先されるリスクみたいなものがあるとは思う。とはいえ漫画でここまで細かく歴史を検証してしかも、オリジナルな議論を読者に読ませるというのはすごいことはすごい。

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