2007年11月23日金曜日

あなたは会社を棄てられるか

著者名;サラリーマン再生委員会 発行年(西暦);1999 出版社;NHK出版
 企業倫理とか社会的責任とかいった風潮(あるいはブーム?)はおそらく山一證券の倒産あたりからある程度真面目に考えられるようになったのではないか、企業中堅の管理職がある程度の発言権を得始めたのもおそらく21世紀の初頭からだが、この本では会社と個人の関係を真摯に分析している。
 ただ現実的には、理想論ではないかといった疑問もありえなくはない。出世主義の限界(いずれは権勢も限界を迎える)を指摘しつつも、ある程度規模の大きい仕事をこなそうとする場合には肩書きが必要な場面も多い。また社内評価をある程度企業外部が参考にするケースもあるだろう。会社人間をやめようという提言はそれなりに説得力があるが会社をやめて生きていける人間など実はそうはいない。そもそもそうした実力をもつ人であれば転職などの道ではなく個人開業をめざすはずだからだ。そして個人開業をする人の多くは社内でもそれなりに活躍していた人だったりする。
 「気に入らぬ風もあろうに柳かな」というある鉄道会社で左遷された人の文句が209ページに引用されていたが、おそらくはそうした環境の変化ではない自分個人のマネジメント力をつけようというところに「正しい論点」があるのだろうと思う。「地道な努力を積み重ねていくと、意外なところから、思いもかけぬ支援者が現れ、大いに意を強くしたものだ」という感慨は長い経験則から導き出された言葉だけに重みがある。やはり一定の年月を一つの場所で蓄積してきた人の重みを考えると会社を簡単に棄てたり拾ったりするものではないというのが日本人的な考えだし、そしてそれはそれなりに尊重すべきことなのだろう。少なくとも明治時代以後、日本人に根強くあるお家大事といった風潮はどれだけ情報化が進んでもそれほど日本人内部あるいは相互関係では変化しないと思う。こうした本と現実を比較してみてマスコミや書籍の内容をいかに咀嚼して自分にとりいれていくのかがむしろ大事になってきたように思う。批判的に受け止めるにはすごくいい本だ。そして著者の挑戦にも感服することはいうまでもない(著者は現役の企業ミドルたちで実名も巻末には表示されている。一種の英断だろう)。

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