2007年11月18日日曜日

下流社会

著者名 三浦展   発行年(西暦) 2005  

 かつての高度経済成長期の下流社会といえば「所有していないもの」「消費できないもの」という定義だったが、21世紀の下流社会は「意欲がない人」ということになるらしい。アンケート調査をもとにした下流社会論はかなり面白い。アンケートでは30代前半の男性に下流社会傾向が強まり、働く意欲や学ぶ意欲が欠けているため、その結果として所得も上昇せず、未婚になるのだそうな。そして「彼らの中にはだらだら歩き、ダラダラ生きている者も少なくない」。厳しい著述だ。
 一億総中流化といわれたのも55年だが、21世紀には階層化の2005年体制が始まるという。経済分析ではジニ係数という指標で所得の階層化を分析するが、この本でもその手法は踏襲されており、中流的な商品はもうあまり売れなくなってきているという。むしろマーケティングとしては階層が上の消費者にターゲットを絞るべきだという結論となり、昨今の百貨店はあまりにも商品の品揃えを中流家庭にあわせすぎたという。この中でさらに性別・年齢をもとにクラスターを分けていくのだが女性については、階層上昇志向か現状維持志向か、で4つのマトリクスに分類し、職業と階層上昇を意識するのが白金台に住むシロガネーゼ、現状志向と専業主婦志向がギャル系という。で、独身生活が長期化している女性は「干物」とか表現してある。勇気あるなあ、この著者。
 ギャル系になるともっと分析は厳しい。結構街にはギャル系がめだつわけだが、「専業主婦志向が強く」「出身階層から考えて一流大学、一流企業の男性と出会うチャンスは少なく」「多くはガテン系と出会う」のだそうだ。この著者のギャル系に対する「憎しみ」みたいなものはOLの分析にも現れており「(OLは)ギャルになるにはそこそこ知性も学歴も高く」と書いてある。ということは社会調査でギャル系は「知性がなくて学歴もない」とかいう結果がでたけれどそれはあからさまにはかけなかったということなのか…。で、下流社会の男性は「パソコン・携帯電話・プレイステーション」が娯楽の中心で、下流女性の中心は「歌とか踊り」なのだそうだ…。えらく大胆な「仮説」が提唱されているが統計データのサンプルがあまりにも少ないので(それは著者も認めている)この仮説はあくまで仮説として受け止めないとまずいだろう。確かに、一流高校とされる女子学院とかでギャル系というのはあまり見たことがないような気もするし、秋葉原にいる男性ってなんとなく収入がそれほど高いというようにも見えない気もする。こういう分析がもっとマクロでちゃんとできればよいが、カラオケに行くのが下流社会というのもどうにも納得できない。だって俺もカラオケには行くし、しかし意欲がないわけではないからなあ。
 衝撃の新書だがこれから相当に反発もくらうであろう一冊。面白いことは面白い。

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