2007年11月20日火曜日

ヨシボーの犯罪

著者名;つげ義春 発行年(西暦);1992 出版社;小学館
 つげ義春の初期の作品を納めた一種の豪奢版。昭和という時代の(しかもおそらく昭和30年代の)風景を緻密に描き、得体の知れない実存主義者や古本屋の主人などが何気なく出てくる。ストーリーはないようであるような不可思議な世界で、増水で氾濫した家で飼っていた雷魚が、家の床の下にまだいた、などおそらく実話からヒントをえたエピソードが連ねられる。人間というものがあまり変わらない存在であることと、木造アパートのわびしさがひたすら描かれるのが興味深い。架空の世界ではあるが、とてつもなく話はリアルで自分が存在すらしていなかった頃の日本なのに妙に郷愁を覚える。

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