2007年11月18日日曜日

チェザーレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷  

著者名;塩野七生 発行年(西暦);1981 出版社;新潮社
 フランス文学ではカンタレッラという毒薬を用いて、さらにローマ法王である父親や妹とのただならぬ関係などあることないこと書かれたチェザーレ・ボルジア。ただこの本では歴史的事実にそくしながら、イタリア統一をはかろうとする16世紀20代の天才的な政治家であるボルジアについて筆をおさえつつ、さらにナポリ公国をめぐるスペインとフランス、フランスに近いフィレンツェ共和国や老練なベネチア共和国などあらゆる外交関係を分析・利用しながら、小領主たちをほろぼしていく手腕と政治哲学が展開される。カソリックの僧侶でありながら、それを脱し、さらに老練なルイ12世とのただものではない表面的な親密さ、さらにレオナルド・ダ・ビンチやマキャベリとの交流など、16世紀イタリア半島とフランス、スペイン、神聖ローマ帝国の政治模様が面白く描かれており、あっという間の読破である。微笑をうかべながら「あらゆることに気を配りながら、私は自分の時が来るのを待っている」というボルジア。あくまで虚構のボルジア像だが、その凄みは毒薬使いというドロドロしたフィクションよりも、ぞっとさせる瞬間だ。

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